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あそぼう、異世界の島

制作者: さんぽ
第1話 島と、最初の椅子
投稿者: さんぽ
目を覚ました時、最初に思ったのは――
(あ、これ死んだな)
だった。

理由は簡単で、天井がなかったからだ。
代わりに見えるのは、どこまでも澄んだ青空と、見慣れない二つの月。

「……異世界、ってやつか?」

声に出すと、潮の匂いが混じった風が頬を撫でた。
体を起こすと、白い砂浜。遠くには緑に覆われた小さな島。どう見ても日本じゃない。

混乱する間もなく、足音がした。

「目、覚めた?」

振り返ると、麦わら帽子をかぶった少女が立っていた。日に焼けた肌、素朴な笑顔。背中には魚籠。

「ここ、どこだ……?」

「カナエ島。漂着者は久しぶりだね」

どうやら俺は、異世界の無人島――ではなく、「人が少ない島」に流れ着いたらしい。
少女――リラは、島の住人で、畑仕事と漁をして暮らしているという。

「生きるの大変そうだな……」
「慣れれば楽だよ。ほら、まずは座って」

そう言って、リラは浜辺に置かれた木箱を指さした。

腰を下ろそうとした、その瞬間。

《固有スキル【家具抽選】が発動しました》

頭の中に、軽い電子音が鳴った。

(……なに?)

次の瞬間、木箱が淡く光り、形を変えた。

「え?」

現れたのは――
背もたれが異様に高く、彫刻が施された、明らかに王城クラスの玉座だった。

「………………」
「………………?」

浜辺に不釣り合いすぎる、金と赤を基調にした豪奢な椅子。
風でマントのような布がはためく。

「な、なにこれ……?」
「いや、俺が聞きたい」

リラは恐る恐る椅子に触れ、目を丸くした。

「これ、王都の大聖堂にあったやつと同じ紋章……」

(やばいやつ引いた)

慌てて立ち上がると、再び音が鳴る。

《家具ランク:SSS
効果:座る者の疲労を完全回復》

試しに腰を下ろした瞬間、
体中の疲れ、空腹、不安がすべて消えた。

「……あ、これ便利だな」

こうして俺は、
異世界ののどかな島で、
なぜか家具だけがチート級という謎の能力を手に入れてしまったらしい。

畑もない。家もない。
でも、浜辺には王の玉座。

スローライフになるはずだった異世界生活は、
どう考えても家具の方向性を間違えている気がした。

リラが笑って言った。

「まあ、座り心地いいなら、いい島だよね」

……この島、意外と楽しくなるかもしれない。
第2話 動く至宝
投稿者: クロマル
「……これ、本物なんだね」

リラが、おずおずと玉座の背もたれを指でなぞる。
夕陽が傾いてきて、王座の金飾りが反射して、白い砂浜がオレンジ色と金色でキラキラしてる。

「ねえ、リラ。この島に、こういうのを欲しがる人とかいないのか?」

「いないよ。だって、みんな畑と海があれば十分だもん」

リラはあっけらかんとして言った。
彼女の服は、麻みたいなゴワゴワした生地で、潮風で少し白っぽくなっている。
その素朴な姿が、この島の生活を感じさせる。

「でもさ、これ、すごく重そう。どうやって運ぶの?」

「……確かに」

俺は椅子をじっと見た。
ただの椅子じゃない。玉座と呼ぶのに相応しい大きさと装飾である。

「……動かせるかな」

《自動運搬機能が有効化されました》

また、頭の中にあの電子音が響いた。
すると、豪華な玉座の脚から、ニョキッと四つの小さな車輪が生えてきた。

「うわっ!? 走った!」

リラが飛びのく。
玉座は、砂の上を滑るように動き出し、勝手に島の奥へと進んでいく。

「待て、どこ行くんだよ!」

俺たちは慌てて、勝手に走り出した王様の椅子を追いかけた。
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