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【水平思考小説】密室の死

制作者: レュー
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員 | 完結数: 2話で完結

概要

第2話 【解答編】密室の死因
レュー
2026年01月13日 14:37 | 14
呆然と立ち尽くす私の視界に、ふと小さなテーブルが映った。

窓辺に置かれたそのテーブルの上に、丸い水の跡がある。今朝まで確かにそこにあったはずのものが、今はない。

そしてすべてを理解した。

◆◆◆

床に散らばるガラスの破片。それは窓のものではなかった。丸みを帯びた、薄い曲面ガラス。

広がる水。それは誰かの涙などではなかった。

私はゆっくりと膝をつき、冷たい水たまりの中心に横たわる小さな体を見つめた。

金色に輝いていた鱗は、もう光を失っている。優雅に揺れていた尾鰭は、力なく床に貼りついていた。

メアリー。

私の愛した金魚。

◆◆◆

2時間前、この街は震度3の地震に見舞われた。

職場で揺れを感じたとき、私は少し嫌な予感がした。けれど、震度3。大したことはないと、自分に言い聞かせた。

その小さな揺れが、テーブルの端に置かれた金魚鉢を床に落とした。

水を失ったメアリーは、息ができなくなった。小さな口を何度も開閉させながら、助けを呼ぶこともできないまま、彼女は一人で逝ってしまった。

2時間。

私が帰るまでの、長い長い二時間を、メアリーは苦しみながら待っていたのかもしれない。

◆◆◆

事件ではなかった。

自殺でもなかった。

ただ、金魚鉢が割れて、一匹の金魚が死んだ。

それだけのこと。

それだけの――小さな、けれど私には何より大きな悲劇だった。

私は静かにメアリーを掌に乗せた。

冷たくなった小さな体は、驚くほど軽かった。

「……ごめんね、メアリー」

涙が頬を伝う。

窓の外では、夕陽が静かに沈んでいく。メアリーが好きだった、あの穏やかな光が、最後に彼女の亡骸を優しく包んでいた。
※ このルートは完結しました
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