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フラグメント『天童ゆりあの日常』

制作者: レュー
第1話 転校生
投稿者: レュー
チャイムが鳴り、けだるい月曜日のホームルームが始まった。
担任の高木先生が、いつものジャージ姿ではなく、少しだけ真面目な顔で教室に入ってくる。

「席につけー。今日は転校生を紹介するぞ」

その言葉で、クラスの空気が少しだけざわついた。
俺、神崎かんざき翔太しょうたは、窓際の後ろから二番目の席で、頬杖をつきながらあくびを噛み殺した。 この時期に転校生なんて珍しいな。どうせまた、親の転勤とかそんな理由だろう。 俺には関係ない話だ。そう思っていた。

ガララ、と教室の引き戸が開く。
一瞬、教室が静まり返った。入ってきたのは、女子だった。

天童てんどうゆりあです。よろしくお願いします」

黒板に白いチョークでサラサラと名前を書くと、彼女はぺこりと頭を下げた。
肩にかかるくらいの長さの黒髪に、少し大きな瞳。 制服の着こなしも普通だし、正直、学校中が騒ぐような「超絶美少女」というわけじゃない。クラスに一人は居そうな、普通にかわいい子、という感じだ。 アイドルみたいにオーラがあるわけでもない。

なのに。

なぜだろう。俺は彼女から目が離せなくなっていた。 ドクン、と心臓が変な音を立てる。 一目惚れ?いや、違う。もっとこう、胸の奥がざわつくような不思議な感覚だ。 なんだこれ。初めて会ったはずなのに、すごく懐かしいような、あるいは見てはいけないものを見たような…。 自分でもうまく言葉にできない焦燥感がこみ上げてくる。

「先生、席はどこですか?」

彼女の声で、俺はハッと我に返った。
天童ゆりあは、教室全体を見渡している。 そして、その視線が俺のところでピタリと止まった気がした。
第2話 彼女は中二病?
投稿者: あさり
「よし、天童は神崎の横の空いてる席なー」
先生が適当に言う。
えっ、俺の隣!?マジか!これって漫画とかでよくあるラッキーなフラグってやつ!?

天童さんは「わかりました」って小さく言って、こっちに歩いてくる。
近くで見ると、やっぱりなんか、オーラっていうか雰囲気が変なんだよね。
ていうか、歩き方がめっちゃ凛々しい。モデルっていうより、なんか騎士様?みたいな?

席に着くなり、天童さんは俺の顔をじーっと見つめてきた。
な、なに?俺の顔に鼻毛でも付いてる?

「……貴殿は、この地の守護者か?」
「へっ?しゅごしゃ?」
思わず変な声が出た。

「いや、失礼。この世界の魔力マナが薄すぎて、少々混乱しているようだ。気にするな」
天童さんはそう言って、俺の机の上にある筆箱を指さした。
「その……輝く箱は、もしや古代の遺物アーティファクトか? 凄まじい威圧感を感じるが……」
いや、それただの100均のプラスチックの筆箱だし!中身ただの消しゴムとペンだし!

もしかして天童さん、めちゃくちゃな天然キャラ……っていうか、重度の中二病ちゅうにびょう!?

俺の平凡な高校生活が、なんだかヤバい方向に音を立てて崩れていく予感がした。
第3話 天童ゆりあと兆候
それから毎日。決まった時間、決まった不可解な行動をとる天童さんから俺は目が離せなかった。授業中、チラリと天童さんの横顔を見る。ああいった発言がなければ、ただの普通のどこにでもいそうな少女。転校してきたばかりなのに、テストの成績もそんなに悪くない。普段使っている無駄な語彙のお陰か、国語の点数だけは異様によかった。

「貴殿、今日はいつになく我の顔を見ているな。何かの兆候を感じているか」
「兆候……?」

 天童さんの指摘に俺はしまった、という顔をする。天童さんに出会ったあの日から、なんだか胸騒ぎがして仕方がなくて、日常を壊したくなくて、彼女を徹底的に避けていたのだ。あからさまに顔に出していたのか、天童さんはフン、と笑う。見下しているわけでもなく、だからといって俺に興味が湧いているわけでもない、天童さんの言った「兆候」について確認したい、と様子だった。
 俺がぼんやりと不敵な笑みを浮かべる天童さんを見ていると、いつも通り机の端に置いてあるプラスチックの筆箱を指差した。

「その遺物アーティファクトから何か、感知したか?」
「いやしてないけど」

 俺の即答を意に介さず、筆箱を横目に興味津々に見ている天童さん。

 何があるってんだ。

 やれやれと次の授業の担当教諭が入ってきたのと同時に、俺は教科書とノートを出し、何気なく筆箱に触れたその時だった。

 ズン、グラウンドの方から音がしたと思えば、チカチカと教室の照明が明滅する。

「フン、来たか」

 天童さんは、窓の外を見て目を伏せる。それは漫画みたいな余裕だった。天童さんは俺の筆箱の中身を俺の机の上にバサバザと落とし、俺の「ちょっと待て……」という制止も聞かず、プラスチックのシンプルなケースを片手に窓の淵に立つ。

「天童!何をするつもりだ!非常事態だ、大人しくしていなさい!」

 教壇に立った教師は、天童さんの奇行に驚嘆しているようだ。だが、それも知らないふりをして、俺を見る。

「やはり、貴殿は同胞であったか。さあ、行こう。これから共に戦おうじゃないか」

 教室のどよめきの中、クリアにその声だけが聞こえた気がする。俺は、どうするべきか迷った。正直何が起こっているのか、理解不能だ。はく、と喉が鳴るのが分かる。彼女の手を取るべきか否か。それで、全て覆ってしまうような、そんな気がしたからだ。
第4話 え、マジで飛んだ!?
投稿者: あさり
「え、ちょ、天童さん!?」

俺が声を上げた瞬間、天童さんは窓から飛び降りた。
ここ、3階なんですけど!?

「うわあああ!」

俺は反射的に窓に駆け寄る。
落ちた!?死んだ!?救急車!!

……と思ったら。

天童さんは、ふわりと宙に浮いていた。
いや、マジで。ガチで。リアルに。

「は?」

俺の口から間抜けな声が漏れる。
天童さんは俺の筆箱……いや、「遺物」を片手に、まるで重力なんて最初からなかったみたいに空中で静止している。風で黒髪がさらさら揺れて、なんかもうアニメのワンシーンみたいだった。

「貴殿も来るがいい。我が手を取れ」

天童さんが手を差し伸べる。
その瞳は、もう教室で見せていた不思議ちゃんのそれじゃない。真剣で、どこか切なげで、俺の心臓がまたドクンと跳ねた。

「いやいやいや無理無理無理!俺飛べないし!普通の人間だし!」
「案ずるな。その筆箱……遺物の守護者たる貴殿なら、きっと——」

その時、グラウンドからまた爆発音。
見下ろすと、なんか黒いモヤモヤした塊がうごめいている。人?いや、あれ絶対人間じゃない。

「時間がない。神崎翔太、決断せよ」

名前、呼ばれた。
フルネームで。
なんでそんなにかっこいいんだよ。

「……っ、くそ!」

気づいたら、俺は窓枠に足をかけていた。
後ろでクラスメイトたちの悲鳴が聞こえる。「神崎くん!?」「やめろって!」「先生ー!」
ごめん皆。俺もなんで自分がこんなことしてるかわかんない。

でも、なんか。
このまま見てるだけって、絶対後悔する気がしたんだ。

俺は、天童さんの手を掴んだ。

——瞬間、世界が光に包まれた。
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