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雨のち、きみ

制作者: 迦楼羅
小説設定: | 連続投稿: 不可 | 投稿権限: 全員

概要

第1話 雨の日のコンビニで
迦楼羅
2025年12月24日 11:28 | 64
その日、私は最悪の気分だった。

朝から降り続く雨。傘を持ってこなかったせいで、駅からの帰り道でびしょ濡れ。おまけにスマホの充電は3%。バイト先の先輩には「もうちょっと気が利くようになってね」なんて嫌味を言われるし、もう何もかもがダメな一日だった。

コンビニの自動ドアをくぐると、エアコンの冷たい風が濡れた肌に突き刺さる。

「さむっ……」

思わず声が出た。

とりあえず温かいものが欲しくて、肉まんのショーケースに向かう。残り一個。よかった、まだある。

「すみません、肉まんひとつ──」

「肉まんください」

声が重なった。

隣を見ると、同じくびしょ濡れの男の人が立っていた。

黒い髪から雫がぽたぽた落ちてる。背が高くて、なんか……ちょっとだけ、かっこいい。年は私より少し上かな。大学生くらい?

「あ」

「あ」

二人して固まる。

店員のおばちゃんが困った顔で私たちを見比べた。

「……ラスト一個なんだけど、どうする?」

沈黙。

気まずい。

私はこういう時、絶対に譲ってしまうタイプだ。だって揉めるの面倒だし。

「……どうぞ」

そう言おうとした瞬間、彼が口を開いた。

「じゃあ、半分こしません?」

「……は?」

「半分こ。俺が買うから、半分あげます。その代わり」

彼はショーケースの横にある小さなイートインスペースを指差した。

「ちょっとだけ話し相手になってくれませんか。俺も今日、最悪な一日だったんで」

何言ってるんだろう、この人。

知らない人とコンビニで肉まん半分こって、どういう状況?

でも。

なんでだろう。

その困ったような笑顔が、少しだけ、私の冷えた心をあたためた気がした。

「……いいですけど。変な人じゃないですよね?」

「たぶん」

「たぶんって何」

彼が笑った。雨の音がやけに優しく聞こえた。

これが、私と彼の──名前も知らない男の人との、最初の出会いだった。
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このパートからの分岐 (1)
肉まんと、嘘と、本当と

イートインの狭い席に向かい合って座る。 テーブルの上には、半分に割られた肉まん。湯気がふわりと立ち...

あさり あさり
12/26 11:10
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第1話 雨の日のコンビニで 迦楼羅 0 65
・その日、私は最悪の気分だった。 朝から降り続く雨。傘を持ってこなかったせいで、...
第2話 肉まんと、嘘と、本当と あさり 0 33
・イートインの狭い席に向かい合って座る。 テーブルの上には、半分に割られた肉まん...
NEW 第3話 二つの肉まん さんぽ 0 31
・それから三日後。 私は、あの日と同じコンビニの前に立っていた。 理由は単純で、...
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