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雨のち、きみ

制作者: 迦楼羅
小説設定: | 連続投稿: 不可 | 投稿権限: 全員

概要

第2話 肉まんと、嘘と、本当と
あさり
2025年12月26日 11:10 | 32
イートインの狭い席に向かい合って座る。

テーブルの上には、半分に割られた肉まん。湯気がふわりと立ち上る。

「……で、何があったんですか」

私が聞くと、彼は肉まんを一口かじってから言った。

「彼女に振られた」

「え」

「三年付き合って、今日、振られた」

あまりにもあっさり言うから、一瞬冗談かと思った。

「……それは、その、大変でしたね」

「うん。まあ、予感はあったんだけど」

彼は窓の外を見た。雨はまだ降り続けている。

「『あなたといると、息が詰まる』って言われた」

「……」

「俺、たぶん重いんだよね。好きになると、全部知りたくなっちゃうタイプで」

知らない人の恋バナを聞かされている。なんだこの状況。

でも、不思議と嫌じゃなかった。

「……私は今日、バイト先の先輩に怒られました」

気づいたら、私も話していた。

「気が利かないって。でも私なりに頑張ってたんですよ。頑張ってたのに」

「うん」

「……それだけなんですけど」

「いや、十分最悪じゃん」

彼が笑った。さっきとは違う、もう少しやわらかい笑い方。

「なんか、俺の話より重くない?」

「いや絶対あなたのほうが重いでしょ。三年ですよ?」

「でも俺は明日には立ち直ってるかも」

「嘘でしょ」

「嘘かも」

なんだそれ。

おかしくて、つい笑ってしまった。

彼も笑った。

雨音だけが静かに響く店内で、二人して肩を震わせて笑った。

「……あ、俺、ひいらぎっていいます。柊しん

「……雨宮あまみやりんです」

「雨宮さんか。雨の日に会ったから覚えやすいな」

「それ、口説き文句のつもりですか」

「違うって」

彼──柊さんは、また困ったように笑った。

「じゃあ、雨宮さん。また会えたら」

「また会えたら?」

「……そん時は、ちゃんと一個ずつ買おう」

「当たり前でしょ」

店を出ると、雨は少しだけ弱くなっていた。

振り返らなかった。でも、なぜか足取りは軽かった。

最悪の一日は、少しだけ、最悪じゃなくなっていた。
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このパートからの分岐 (1)
二つの肉まん

それから三日後。 私は、あの日と同じコンビニの前に立っていた。 理由は単純で、帰り道だから。 それ...

さんぽ さんぽ
12/27 12:48
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第1話 雨の日のコンビニで 迦楼羅 0 64
・その日、私は最悪の気分だった。 朝から降り続く雨。傘を持ってこなかったせいで、...
第2話 肉まんと、嘘と、本当と あさり 0 33
・イートインの狭い席に向かい合って座る。 テーブルの上には、半分に割られた肉まん...
NEW 第3話 二つの肉まん さんぽ 0 31
・それから三日後。 私は、あの日と同じコンビニの前に立っていた。 理由は単純で、...
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