雨のち、きみ
制作者:
迦楼羅
小説設定:
|
連続投稿: 不可
|
投稿権限:
全員
概要
最悪な一日の終わり、雨に濡れてたどり着いたコンビニで、主人公の「私」は見知らぬ男性と肉まんの最後の一個を取り合うことに。「半分こしませんか」という彼の提案から始まる、小さな偶然の物語。
イートインの狭い席に向かい合って座る。
テーブルの上には、半分に割られた肉まん。湯気がふわりと立ち上る。
「……で、何があったんですか」
私が聞くと、彼は肉まんを一口かじってから言った。
「彼女に振られた」
「え」
「三年付き合って、今日、振られた」
あまりにもあっさり言うから、一瞬冗談かと思った。
「……それは、その、大変でしたね」
「うん。まあ、予感はあったんだけど」
彼は窓の外を見た。雨はまだ降り続けている。
「『あなたといると、息が詰まる』って言われた」
「……」
「俺、たぶん重いんだよね。好きになると、全部知りたくなっちゃうタイプで」
知らない人の恋バナを聞かされている。なんだこの状況。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
「……私は今日、バイト先の先輩に怒られました」
気づいたら、私も話していた。
「気が利かないって。でも私なりに頑張ってたんですよ。頑張ってたのに」
「うん」
「……それだけなんですけど」
「いや、十分最悪じゃん」
彼が笑った。さっきとは違う、もう少しやわらかい笑い方。
「なんか、俺の話より重くない?」
「いや絶対あなたのほうが重いでしょ。三年ですよ?」
「でも俺は明日には立ち直ってるかも」
「嘘でしょ」
「嘘かも」
なんだそれ。
おかしくて、つい笑ってしまった。
彼も笑った。
雨音だけが静かに響く店内で、二人して肩を震わせて笑った。
「……あ、俺、柊っていいます。柊真」
「……雨宮凛です」
「雨宮さんか。雨の日に会ったから覚えやすいな」
「それ、口説き文句のつもりですか」
「違うって」
彼──柊さんは、また困ったように笑った。
「じゃあ、雨宮さん。また会えたら」
「また会えたら?」
「……そん時は、ちゃんと一個ずつ買おう」
「当たり前でしょ」
店を出ると、雨は少しだけ弱くなっていた。
振り返らなかった。でも、なぜか足取りは軽かった。
最悪の一日は、少しだけ、最悪じゃなくなっていた。
テーブルの上には、半分に割られた肉まん。湯気がふわりと立ち上る。
「……で、何があったんですか」
私が聞くと、彼は肉まんを一口かじってから言った。
「彼女に振られた」
「え」
「三年付き合って、今日、振られた」
あまりにもあっさり言うから、一瞬冗談かと思った。
「……それは、その、大変でしたね」
「うん。まあ、予感はあったんだけど」
彼は窓の外を見た。雨はまだ降り続けている。
「『あなたといると、息が詰まる』って言われた」
「……」
「俺、たぶん重いんだよね。好きになると、全部知りたくなっちゃうタイプで」
知らない人の恋バナを聞かされている。なんだこの状況。
でも、不思議と嫌じゃなかった。
「……私は今日、バイト先の先輩に怒られました」
気づいたら、私も話していた。
「気が利かないって。でも私なりに頑張ってたんですよ。頑張ってたのに」
「うん」
「……それだけなんですけど」
「いや、十分最悪じゃん」
彼が笑った。さっきとは違う、もう少しやわらかい笑い方。
「なんか、俺の話より重くない?」
「いや絶対あなたのほうが重いでしょ。三年ですよ?」
「でも俺は明日には立ち直ってるかも」
「嘘でしょ」
「嘘かも」
なんだそれ。
おかしくて、つい笑ってしまった。
彼も笑った。
雨音だけが静かに響く店内で、二人して肩を震わせて笑った。
「……あ、俺、柊っていいます。柊真」
「……雨宮凛です」
「雨宮さんか。雨の日に会ったから覚えやすいな」
「それ、口説き文句のつもりですか」
「違うって」
彼──柊さんは、また困ったように笑った。
「じゃあ、雨宮さん。また会えたら」
「また会えたら?」
「……そん時は、ちゃんと一個ずつ買おう」
「当たり前でしょ」
店を出ると、雨は少しだけ弱くなっていた。
振り返らなかった。でも、なぜか足取りは軽かった。
最悪の一日は、少しだけ、最悪じゃなくなっていた。
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