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当世浮世百面相

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概要

第2話 箱先生、化けの皮を剥ぐ
冬至梅
2025年12月16日 17:11 | 73
御隠居は鼻を鳴らし、本を置いて腕を組んだ。

「ほーう、それほど賢い箱なら、わしが若い頃、神童と呼ばれたことも知っておろうな」

「へい、朝飯前でさぁ!」

 八五郎が人差し指で箱を撫でると、箱の面がぴかりと光る。

「ええと……『御隠居、若い頃』……おっと、出ましたぜ」

 その瞬間、八五郎の顔がにやりと歪んだ。

「おやおや……? 御隠居、こいつぁ神童どころか……。
 箱先生によりますと、昼は博打、夜は酒、明け方は女郎屋。学問は三日坊主、借金は年季明け。こりゃあ見事な道楽三昧で」

 御隠居はぴたりと固まった。

「……ま、待て八。それは人違いであろう」

「いえいえ、歳も住まいもぴったり。あ、ここに絵付きで出ていやす」

 御隠居は真っ赤になり、慌てて箱を取り上げようとするが、箱は無情にも続きを映す。

「おや? まだありやすぜ。『女房に内緒で質入れ』」

「もうよい! 見るなーっ!」

 こうして御隠居の威厳は地に落ち、程なくして長屋には笑い声が響いた。

***

 さて、江戸の町ではこのような合言葉が流行り出した。「知りたいことは箱に聞け」。今や、婿むこ探しも箱、病も箱、明日の天気も箱頼みである。

「この男は婿にいいかい?」
「箱先生によれば、笑顔は良いが金遣いが荒い」

「昨夜から咳が止まらねえ」
「箱先生いわく、三日で治るが酒は控えろ」

 もはや誰一人として人間の話を聞かず、箱の示すことを信じる始末である。
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このパートからの分岐 (1)
箱無くば人も無し

その日から、江戸の町は様変わりした。 朝、日が昇っても誰も「おはよう」と声をかけぬ。 隣の者に挨拶...

ジェミニ山人 ジェミニ山人
12/17 11:24
全階層の表示(6件)
第1話 万繰言 箱入知恵 ジェミニ山人 1 53
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第2話 箱先生、化けの皮を剥ぐ 冬至梅 1 74
・御隠居は鼻を鳴らし、本を置いて腕を組んだ。 「ほーう、それほど賢い箱なら、わし...
第3話 箱無くば人も無し ジェミニ山人 0 47
・その日から、江戸の町は様変わりした。 朝、日が昇っても誰も「おはよう」と声をか...
第4話 箱先生、商いを始める 冬至梅 1 52
・さてその頃、浅草の長屋に、半次郎という|蕎麦屋《そばや》がいた。腕は悪くないが、...
第5話 箱先生、沈黙す ジェミニ山人 0 54
・その日は、いつもと変わらぬ朝のはずだった。 八五郎は目を覚ますなり、枕元の箱に手...
NEW 第6話 箱先生、正体を現す クロマル 0 22
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