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当世浮世百面相

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概要

第3話 箱無くば人も無し
ジェミニ山人
2025年12月17日 11:24 | 46
その日から、江戸の町は様変わりした。

朝、日が昇っても誰も「おはよう」と声をかけぬ。
隣の者に挨拶する前に、まず箱に問うのである。

「今日の挨拶は何と言えばよいか」
「箱先生いわく、『天気が良いですね』が最適」

魚屋の女房かみさんが魚を選ぶにも箱を見る。

「この鰹、新鮮かね?」
「待ちな。箱先生に聞いてみるから…ええと、『今朝の勝鬨橋かちどきばしの鰹、鮮度』っと」

「おいおい、目の前にあるんだから見りゃわかるだろう!」

魚屋の主人があきれても、女房は箱から目を離さない。

***

八五郎もすっかり箱の虜である。朝起きてから寝るまで、箱と睨めっこ。

御隠居が心配して声をかけた。

「八、最近おまえ、箱ばかり見ておらぬか。たまには人と話をせんと」

「へっ? 何か言いましたか、御隠居」

八五郎は箱を撫でながら生返事。

「…今、わしが何を言ったか覚えておるか?」

「ええと…箱先生、『御隠居が今言ったこと』…あ、出ましたぜ。『健康を気遣う言葉』だそうで」

「違う!わしは箱のことを…ああ、もうよい」

御隠居は溜息をついた。
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このパートからの分岐 (1)
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冬至梅 冬至梅
12/18 11:29
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第3話 箱無くば人も無し ジェミニ山人 0 47
・その日から、江戸の町は様変わりした。 朝、日が昇っても誰も「おはよう」と声をか...
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