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毒饅頭事件

制作者: 冬至梅
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員 | 完結数: 15話で完結

概要

第2話 雅芳堂にて
蒼月(そうげつ)
2025年12月19日 16:49 | 48
雅芳堂は、都心から少し外れた商店街の一角にあった。

古びた木の看板、磨りガラスの引き戸。店先には季節の和菓子が並び、甘い香りがかすかに漂っている。

「…いらっしゃいませ」

奥から出てきたのは、五十代半ばと思しき女性だった。店主の中谷よし江。割烹着姿で、手には布巾を持ったまま。警察手帳を見せると、彼女の表情がわずかに強張った。

「あの事件のこと、ですよね」

「ええ。改めてお聞きしたいことがありまして」

氷室は店の隅にある小さな椅子を勧められ、腰を下ろした。中谷は向かいに座り、膝の上で両手を重ねた。その指先が、わずかに震えている。

「…うちの名前が使われたって聞いて、本当にびっくりしました。なんでうちなのか、見当もつかなくて」

「大藤テキスタイルの社長、大藤宗治さんとは面識は?」

「いえ、ほとんど。お見かけしたことはあるかもしれませんけど…」

中谷は視線を落とした。氷室は黙って待った。

「…ただ、父は存じ上げていたようです」

「先代の店主、中谷源蔵げんぞうさんですね」

「はい。父と大藤さんは、昔から付き合いがあったと聞いています。詳しいことは私も分からないんですが…父が亡くなったのは、もう十五年も前ですから」

中谷の声は静かだったが、どこか遠くを見るような目をしていた。

「当時のことをご存知の方は、他にいらっしゃいますか」

「そうですね…」

中谷は少し考え込むように首を傾げた。

「堀田さんなら、何かご存知かもしれません。父が元気だった頃、ここで働いていた方です。今は名古屋にお住まいで、年賀状のやり取りだけは続いているんですが」

「堀田さん。下のお名前は?」

「堀田正彦まさひこさんです。七十を過ぎていらっしゃるはずですけど、お元気だと聞いています」

氷室は手帳に名前を書き留めた。

「連絡先をお教えいただけますか」

「ええ、少々お待ちください」

中谷は奥へ消えていった。

氷室はふと、店内を見回した。壁には古い写真が何枚か飾られている。若い頃の中谷と、白髪の男性が並んで写っているものがあった。男性は穏やかな笑顔を浮かべている。

先代と娘。十五年前、何かあったのだろうか。

氷室は写真から目を離し、小さく息をついた。
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このパートからの分岐 (1)
情報整理 その一

夕方の捜査一課は、昼間とは別の緊張を帯びていた。氷室警部は会議卓の端に立ち、ホワイトボードに貼られた...

冬至梅 冬至梅
12/22 11:03
全階層の表示(6件)
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・|氷室《ひむろ》|慎一《しんいち》警部は会議室の中央に立ち、ホワイトボードを見つめ...
第2話 雅芳堂にて 蒼月(そうげつ) 1 49
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