一少年の夏休み
制作者:
あさり
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
概要
小学5年生アキトがおばあちゃんのいる田舎にやって来た一夏の体験談。
ノスタルジックな気分になれるお話になれたらなーと思います。
登場人物
アキト:小学5年生。父に連れられて東京から田舎のおばあちゃんのところにやってきた。
ノスタルジックな気分になれるお話になれたらなーと思います。
登場人物
アキト:小学5年生。父に連れられて東京から田舎のおばあちゃんのところにやってきた。
居間には、古いエアコンが一台だけついていた。ブーンと唸ってはいるけれど、風はぬるくて、まるで生ぬるいため息みたいだった。扇風機もくるくる回っているけど、首を振るたびにカタカタと頼りない音を立てる。
「一週間よろしく頼むよ、母さん」
父さんがそう言う声が、居間の奥から聞こえた。おばあちゃんは「はいはい、任せときな」と笑っている。
「アキト、母さんが退院するまで、いい子で待っててな。父さんも仕事が立て込んでるから」
父さんはそう言いながら、少しだけ苦いような顔をした。僕は「わかったよ」と言ったけれど、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。母さんの病気、いつ治るんだろ……。
おばあちゃんは僕の頭をぽんと軽く叩き、「心配いらないよ。ここは空気も水もおいしいから、ゆっくりしていきな」と言った。おばあちゃんの手のひらは日なたみたいに温かかった。
父さんは慌ただしく荷物を確認して、すぐに帰る準備をし始めた。僕は縁側に出て、サンダルを引きずりながら外へ出た。田んぼから吹いてくる風の方が、クーラーより少しだけ涼しい。風鈴がチリンと鳴り、風に乗って草の匂いが流れてくる。
「じゃあ、行くからな」
父さんが車の窓を開けて僕に手を振る。僕も思わず大きく手を振り返した。おばあちゃんも横でうんうんとうなずきながら、まぶしそうに目を細めていた。
父さんの車がエンジン音を響かせながら、ゆっくりとあぜ道を走り出した。最初は近くにあった排気ガスの匂いが、徐々に土の匂いにかき消されていく。車が遠ざかるに連れて、セミの声がまただんだん大きくなる。
僕はしばらく手を振り続けていたけれど、車の姿が稲の向こうに小さくなり、最後には完全に見えなくなった。その瞬間、胸の中にぽっかりと穴があいたみたいな気がした。
「アキト、ご飯までまだ時間あるし、ちょっと散歩でもしてくるかい?」
おばあちゃんがそう声をかけてくれた。僕は「うん」と答えたけれど、心のどこかで、さっきまで当たり前だったものが急に自分から離れていったような寂しさを抱えていた。
遠くの川の音がかすかにして、空には入道雲がもくもくと広がっている。
「ここで一週間か……」
小さくつぶやくと、セミの声がそれに応えるように、もっと大きく鳴き出した。
なんだか、これから何かが始まりそうな気がした。
でもそれが何なのか、僕にはまだ分からなかった。
「一週間よろしく頼むよ、母さん」
父さんがそう言う声が、居間の奥から聞こえた。おばあちゃんは「はいはい、任せときな」と笑っている。
「アキト、母さんが退院するまで、いい子で待っててな。父さんも仕事が立て込んでるから」
父さんはそう言いながら、少しだけ苦いような顔をした。僕は「わかったよ」と言ったけれど、胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。母さんの病気、いつ治るんだろ……。
おばあちゃんは僕の頭をぽんと軽く叩き、「心配いらないよ。ここは空気も水もおいしいから、ゆっくりしていきな」と言った。おばあちゃんの手のひらは日なたみたいに温かかった。
父さんは慌ただしく荷物を確認して、すぐに帰る準備をし始めた。僕は縁側に出て、サンダルを引きずりながら外へ出た。田んぼから吹いてくる風の方が、クーラーより少しだけ涼しい。風鈴がチリンと鳴り、風に乗って草の匂いが流れてくる。
「じゃあ、行くからな」
父さんが車の窓を開けて僕に手を振る。僕も思わず大きく手を振り返した。おばあちゃんも横でうんうんとうなずきながら、まぶしそうに目を細めていた。
父さんの車がエンジン音を響かせながら、ゆっくりとあぜ道を走り出した。最初は近くにあった排気ガスの匂いが、徐々に土の匂いにかき消されていく。車が遠ざかるに連れて、セミの声がまただんだん大きくなる。
僕はしばらく手を振り続けていたけれど、車の姿が稲の向こうに小さくなり、最後には完全に見えなくなった。その瞬間、胸の中にぽっかりと穴があいたみたいな気がした。
「アキト、ご飯までまだ時間あるし、ちょっと散歩でもしてくるかい?」
おばあちゃんがそう声をかけてくれた。僕は「うん」と答えたけれど、心のどこかで、さっきまで当たり前だったものが急に自分から離れていったような寂しさを抱えていた。
遠くの川の音がかすかにして、空には入道雲がもくもくと広がっている。
「ここで一週間か……」
小さくつぶやくと、セミの声がそれに応えるように、もっと大きく鳴き出した。
なんだか、これから何かが始まりそうな気がした。
でもそれが何なのか、僕にはまだ分からなかった。
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