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ファントム・オブ・ジ・オペラ

制作者: 冬至梅
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員 | 完結数: 50話で完結

概要

第6話 支配人のオフィス
冬至梅
2025年12月09日 15:17 | 57
翌朝、玄関ホールの大理石には灰色の朝靄がうっすらと纏わりついていた。アマンド・モンチャミンとファーミン・リチャードは、扉を押し開けると同時に、劇場の冷えた空気に迎えられる。だが、その静けさの裏には、昨夜から続く不吉な気配が潜んでいるようであった。

 リチャードは胸元に触れ、失われた金時計を思い出しては深いため息をつく。

「まったく……あれがないと落ち着かん」

 モンチャミンは肩をすくめ、やや軽い調子で言う。

「もう忘れたまえ。劇場支配人の月給なら、金時計ぐらい新しいのが買えるだろう」

「買えるわけがないだろう! あれは家宝だったんだ!同じものは二つとない!」

 リチャードは足取りを乱し、声を荒げる。

 支配人室の前に近づくと、そこでマダム・ジリーが控えていた。

「おはようございます。モンチャミン様、リチャード様」

「おはよう、マダム」

 モンチャミンが答えた瞬間、彼女は静かに手を差し出した。

「……お二人へ、こちらをお預かりしております」

 昨日と同じ赤い封蝋。奇妙な印章が不気味な存在感を放っていた。リチャードの顔色がみるみる青ざめる。

「まさか……O.G.ではないだろうね?」

 その問いに、マダム・ジリーは一言も発さず、ただ小さく頷いた。リチャードは額を押さえ、呻く。

「まったく、勘弁してくれ……」

「まあ、中でゆっくり読むとしよう。マダムもお入りなさい」

 モンチャミンが扉を開け、三人は薄暗い支配人室へ足を踏み入れた。

 重厚なデスクに腰かけたモンチャミンは、封を切り、中の手紙を広げる。
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このパートからの分岐 (1)
秘密の代償

手紙を手に取ったモンチャミンは、一瞬だけ眉をひそめた後、声に出して読み上げた。 「えー、『支配人諸...

蒼月(そうげつ) 蒼月(そうげつ)
12/10 15:48
全階層の表示(8件)
第1話 プロローグ 冬至梅 0 73
・***  1880年、冬の気配が濃く垂れ込めるパリの明朝、重々しい馬車がガルニエ宮...
第2話 亡霊からの挨拶 蒼月(そうげつ) 1 74
・「馬鹿げている!」  新支配人リチャードは手紙を握りつぶし、相棒のモンチャミン...
第3話 エンジェル・オブ・ミュージック 冬至梅 0 63
・同じ頃、支配人室のざわめきなど遠い世界のことのように、コーラスガールの楽屋には静...
第4話 疑惑の眼差し 蒼月(そうげつ) 1 70
・手紙をドレスのポケットの奥深くへ押し込むと、クリスティーヌは音を立てないように楽...
第5話 冬至梅 0 65
・クリスティーヌは、涙が滲む視界のまま階段を駆け降りた。ようやく辿り着いたのは、地...
第6話 支配人のオフィス 冬至梅 0 58
・翌朝、玄関ホールの大理石には灰色の朝靄がうっすらと纏わりついていた。アマンド・モ...
第7話 秘密の代償 蒼月(そうげつ) 1 73
・手紙を手に取ったモンチャミンは、一瞬だけ眉をひそめた後、声に出して読み上げた。...
NEW 第8話 ラウルの葛藤 冬至梅 0 61
・若き子爵は、はっと息を呑むと、影のように身を翻し、階段を駆け下りた。やがてロビー...
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