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ファントム・オブ・ジ・オペラ

制作者: 冬至梅
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員 | 完結数: 50話で完結

概要

第7話 秘密の代償
蒼月(そうげつ)
2025年12月10日 15:48 | 73
手紙を手に取ったモンチャミンは、一瞬だけ眉をひそめた後、声に出して読み上げた。

「えー、『支配人諸君。君たちは私の存在を軽んじているようだが、今夜の公演でその愚かさを理解するだろう。クリスティーヌ・ダーエをプリマとして舞台に立たせよ。彼女こそが、真の歌声を持つ者だ。もし従わぬのなら、今夜のオペラ座は——』」

そこで、モンチャミンの声が途切れた。

「何だ、続きを読め」
リチャードが促すと、モンチャミンは顔を上げて言った。

「『もし従わぬのなら、ある秘密を公にすることになる。前支配人たちが隠していた、この劇場の恥ずべき過去を』だそうだ」

その言葉に、マダム・ジリーの表情がわずかに揺れた。リチャードは鼻で笑う。

「はっ、脅しか。前支配人の秘密など、我々には関係ない」
「いえ…」

ジリーが、珍しく強い口調で口を挟んだ。二人の支配人が驚いて彼女を見る。

「関係ないでは済まされません。もし、あの事が明るみに出れば…オペラ座の評判は地に落ちます」
「あの事とは?」

モンチャミンが尋ねると、ジリーは唇を噛んで俯いた。

「十年前、このオペラ座で、ある事故がありました。舞台装置の不備で、若い踊り子が、亡くなったのです…」

部屋の空気が張り詰めた。

「しかし、前支配人たちは、それを隠蔽しました。事故ではなく、病死として処理したのです。遺族には口止め料を渡し…」

「まさか」
リチャードの顔色が変わった。
「そんな醜聞が今になって…」

「怪人は、知っているのです。あの時、この劇場で何があったのか。そして…」

ジリーは震える声で続けた。

「亡くなった踊り子の名は、エリーズ・ダーエ。クリスティーヌの、実の姉でした」

その名を聞いた瞬間、支配人たちは息を呑んだ。

「クリスティーヌは、知っているのか?」

「いいえ。彼女は当時まだ幼く、姉が事故で亡くなったことも知りません。父親は、娘を守るために嘘をつき続けました。そして父も亡くなった今…真実を知る者は、もうほとんどいません」

モンチャミンは手紙を握りしめた。

「つまり、怪人はこの秘密を使って、我々を脅しているのか」

「それだけでは、ありません」

ジリーは、まるで何かに怯えるように声を落とした。

「怪人は…恐らく、エリーズの死に関わった者たちに、復讐をしようとしているのです。前支配人たちが相次いで不幸に見舞われたのも、偶然ではないかもしれません」

その時、廊下から足音が聞こえた。

三人が振り返ると、扉の隙間から、誰かがこちらを覗いている気配がした。しかし、姿を確認する前に、その人影はするりと闇の中へ消えていった。

マダム・ジリーは青ざめた顔で呟いた。

「…誰かに、聞かれてしまったかもしれません」
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このパートからの分岐 (1)
ラウルの葛藤

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冬至梅 冬至梅
12/10 19:21
全階層の表示(8件)
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・***  1880年、冬の気配が濃く垂れ込めるパリの明朝、重々しい馬車がガルニエ宮...
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第3話 エンジェル・オブ・ミュージック 冬至梅 0 63
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第5話 冬至梅 0 65
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第7話 秘密の代償 蒼月(そうげつ) 1 74
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