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白銀の檻、暖炉の密室

制作者: クロマル
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員

概要

第5話 現場検証
クロマル
2025年12月03日 13:53 | 66
「……派手にやったな」
私は呟きながら、豪田の遺体の横に膝をつく。
床に広がった血は、暖炉の光を吸い込んで、まるでドス黒い油絵具をぶちまけたみたいに見える。鉄の錆びたような臭いが鼻をついた。

「おい、あまり不用意に触るなよ」
背後から鬼頭が低い声で釘を刺してくる。
「分かってる。まずは見るだけだ」

私は豪田の背中に突き刺さったナイフに目を凝らした。
柄の部分には細かい装飾が彫られている。鹿の角だろうか?
このペンションに飾ってあったアンティーク品かもしれない。グリップの銀色の部分が、炎を受けてギラリと光っている。

ふと、豪田の右手が何かを掴もうとするような形で固まっているのが気になった。
その指先が向いている先。そこは暖炉の中だ。

パチパチと薪が爆ぜる。
揺らめく炎の奥を、目を細めて覗き込む。燃え盛るオレンジ色の世界の中に、ひとつだけ異質な色が混ざっていた。

「……なんだ、あれは?」
「どうした、何か見つけたか?」

鬼頭が身を乗り出してくる。
私はハンカチを取り出し、火傷しないように気をつけながら、その『燃え残り』を慎重に掻き出した。

それは、半分ほど焼け焦げた、一枚の写真の切れ端だった。
写っていたのは、若い女性の笑顔。
だが、肝心の顔半分は黒く焦げていて、誰だか判別がつかない。背景にはどこかの湖が写っているようだ。

「写真……?」
鬼頭が怪訝な顔をする。
私はその切れ端をハンカチに包みながら、ふと視線を感じて顔を上げた。

遠巻きにこちらを見ていた4人の容疑者たち。
その中で一人だけ、九条という女が、一瞬だけ真っ青な顔で口元を押さえていたのが見えた気がした。
……いや、気のせいか?彼女はすぐにまた妖艶な笑みを浮かべ、グラスを傾ける仕草に戻っていた。

(この写真は、被害者の持ち物か? それとも犯人が消そうとした証拠か?)

私は静かに立ち上がり、焼け焦げた紙片をポケットにしまった。
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このパートからの分岐 (1)
微かな手がかり

私は暖炉から視線を外し、ラウンジ全体をゆっくりと見渡した。 「相馬、こっちに」 鬼頭が床を指差す。...

蒼月(そうげつ) 蒼月(そうげつ)
12/05 22:49
全階層の表示(10件)
第1話 プロローグ クロマル 0 86
・窓の外は、世界を白く塗りつぶす猛吹雪。 山奥に佇むペンション『スノードロップ』の...
第2話 閉ざされた山荘 蒼月(そうげつ) 0 104
・暖炉の火の粉がパチパチと舞う。 そのオレンジ色の光を背に受けて、鬼頭が一歩前へ出...
第3話 相馬と鬼頭 クロマル 0 73
・暖炉の炎が、豪田の背中に突き刺さったナイフの柄を鈍く光らせている。私は吸い寄せら...
第4話 探偵・相馬 ケンヂ 0 70
・「おい、待てよ」 沈黙を破ったのは、不機嫌そうに紫煙を吐き出していた御子柴だった...
第5話 現場検証 クロマル 0 67
・「……派手にやったな」 私は呟きながら、豪田の遺体の横に膝をつく。 床に広がった血...
第6話 微かな手がかり 蒼月(そうげつ) 0 58
・私は暖炉から視線を外し、ラウンジ全体をゆっくりと見渡した。 「相馬、こっちに」...
第7話 容疑者1:御子柴 クロマル 0 75
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第9話 容疑者3:毒島 クロマル 0 62
・|毒島《ぶすじま》は暖炉から一番遠い窓際に立っていた。 白衣の背中が、吹雪で真っ...
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