社畜だった俺が異世界で温泉宿を始めたら、なぜか女神と魔王が常連客になりました
制作者:
Zelt
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
概要
■登場人物
・主人公(元社畜)平穏な第二の人生を送りたいが、なぜかトラブル体質。現在は《ゆのや》の店長。
・ユノ(温泉の女神)金髪・白いワンピース・背中に小さな羽。儚げな微笑みが印象的。実はかなりの自由人で、細かいことは全部人任せ。
・魔王(魔王さま)漆黒のローブ・美しい容貌・角が生えている。強大な魔族の王だが、部下が不甲斐なくて常に疲れてる。意外と庶民的。
・勇者 魔王を倒すために旅に出てる勇者。成長途上で魔王四天王に苦戦してる。
・ヴァルキリー(戦乙女) ヴァルシア。燃えるような赤い髪。銀色の鎧。白銀の翼。巨大な槍を持つ。美しいが男勝りの性格
・セレーネ(月と癒やしの女神)銀色の長い髪を持つ美女。満月に近い日は元気だが、新月に近づくごとに寝る時間が増える。
・主人公(元社畜)平穏な第二の人生を送りたいが、なぜかトラブル体質。現在は《ゆのや》の店長。
・ユノ(温泉の女神)金髪・白いワンピース・背中に小さな羽。儚げな微笑みが印象的。実はかなりの自由人で、細かいことは全部人任せ。
・魔王(魔王さま)漆黒のローブ・美しい容貌・角が生えている。強大な魔族の王だが、部下が不甲斐なくて常に疲れてる。意外と庶民的。
・勇者 魔王を倒すために旅に出てる勇者。成長途上で魔王四天王に苦戦してる。
・ヴァルキリー(戦乙女) ヴァルシア。燃えるような赤い髪。銀色の鎧。白銀の翼。巨大な槍を持つ。美しいが男勝りの性格
・セレーネ(月と癒やしの女神)銀色の長い髪を持つ美女。満月に近い日は元気だが、新月に近づくごとに寝る時間が増える。
俺の描いた『巨大温泉テーマパーク計画』は、企画書に書いてから三秒で頓挫した。
理由はシンプルだ。
俺の体力が持たない。
サウナに水風呂、マッサージに食事処。これらを俺一人と、役に立つのか立たないのか微妙なラインを反復横跳びしている女神ユノだけで回すなんて、ブラック企業どころの騒ぎじゃない。
過労死して異世界転生したのに、また過労死して次の世界へドロップアウトすることになる。
「というわけで、テーマパークは諦める」
「えぇ〜!卓球場楽しみにしてたのにぃ」
不満げに頬を膨らませるユノを無視して、俺は宣言した。
「だが、最低限の防衛策として、『男湯』と『女湯』は分けることにする!」
これなら、もし勇者と魔王が同時に来ても、物理的に隔離できる。
あの戦乙女のヴァルシアに関しては、普段は戦場で忙しいらしく頻繁には来られないとのことなので、「来るなら絶対に予約を入れろ。さもなくば出禁」とユノ経由で厳命しておいた。
さて、場所を分けたとしても、掃除する場所と管理する場所が二倍になったことに変わりはない。
俺は真剣な眼差しでユノに向き直った。
「ユノ。バイトを雇おう」
「バイト、ですか?」
「そうだ。俺とお前だけじゃ手が足りない。神様ネットワークで、暇してる女神とかいないのか?」
俺の問いに、ユノは「うーん」と人差し指を顎に当てて考え込む。
「『アスちゃん』とか、今めっちゃ暇してるって言ってましたよ?」
「誰だそのアスちゃんって」
「正義と天秤の女神、アストレアちゃんです!悪を許さない性格で、すっごく真面目ですよ!」
俺は食い気味に「却下!」と叫んだ。
「ダメに決まってるだろ!『正義』とか一番やばい属性じゃねーか!魔王が来たら問答無用で断罪スタートだろ!店が壊れるわ!」
「えぇー。真面目なのにぃ」
「もっとこう……魔王と鉢合わせしても『あらあら〜』で済ませてくれそうな、温厚なヤツはいないのか?あと、お前みたいに勝手に仕事を増やさないヤツ!」
「私、勝手に増やしてませんよ! クリエイティブな提案をしてるだけです!」
ユノはむぅっと口を尖らせたが、すぐにまたポンと手を叩いた。
「あ、じゃあ『セレーネちゃん』なんてどうですか?月と癒やしの女神なんですけど、性格はおっとり系で、争い事とか大嫌いですし」
「月と癒やし……」
その響き、悪くない。
月の女神なら、夜の露天風呂とか映えそうだし、癒やし属性なら温泉宿との相性も抜群だ。何より『おっとり』というのがいい。魔王を見ても悲鳴を上げたり剣を抜いたりしなさそうだ。
「よし、そのセレーネさんだ。一回面接してみよう」
◆
数日後の夜。
空に細い月が浮かぶ頃、その女神はやってきた。
「はじめましてぇ……。セレーネと……申しますぅ……」
現れたのは、夜空を溶かしたような銀色の長い髪を持つ、儚げな美女だった。
少し眠そうなとろんとした瞳に、透き通るような白い肌。ユノもぱっと見は麗しい美人だが内面はアレなので、こちらは深窓の令嬢といった雰囲気だ。
(こ、これだ……!俺が求めていた癒やしは!)
俺は心の中でガッツポーズをした。
物腰も柔らかいし、言葉遣いも丁寧だ。これなら接客も安心して任せられる。
「採用です! ぜひウチで働いてください!」
「えぇ……?いいんですかぁ……?私、動作が遅いってよく言われるんですけどぉ……」
「構いません!そのゆったりとした動作こそが、お客様に安らぎを与えるんです!」
俺は即決で契約書にサインをもらった。
これで《ゆのや》の未来は安泰だ。俺の負担も減って、念願のスローライフに一歩近づいた……はずだった。
◆
数日後。
「……起きない」
俺は、従業員控え室(ただの物置)で、呆然と立ち尽くしていた。
新入りのセレーネが、布団にくるまったままピクリとも動かないのだ。
「おい、セレーネさん?もう開店時間だぞ?」
「ぅぅ……むにゃ……今夜は……新月だからぁ……無理ぃ……」
布団の中から、消え入りそうな声が聞こえてくる。
俺は慌ててフロントにいるユノを呼びつけた。
「おいユノ!セレーネさんがなんか弱ってるぞ!病気か!?」
ユノは布団の塊を見るなて、「あぁそうでした」と何でもないような風に答えた。
「店長、言い忘れてました。セレーネちゃん、月の女神なんで、月の満ち欠けに体調が超リンクするんです」
「は?」
「満月の前後三日間くらいはめっちゃ元気で輝いてるんですけど、それ以外の日はだいたいこんな感じで、布団とお友達です」
「……え、じゃあ働けるのって、一ヶ月に数日だけ?」
「そうなりますね!特に新月の日は、存在が消えかけるくらい省エネモードになります!」
「つかえねーーー!!」
俺の叫び声が、虚むなしく響き渡る。
布団の塊からは「すぅ……すぅ……」と寝息が聞こえ始めた。
こうして、温泉宿《ゆのや》に新しい仲間が増えた。
ただし、戦力になるのは月に数日だけという、レアキャラ仕様の女神様だった。
俺はため息をつきながら、結局今日も一人で風呂掃除に向かうのだった。
理由はシンプルだ。
俺の体力が持たない。
サウナに水風呂、マッサージに食事処。これらを俺一人と、役に立つのか立たないのか微妙なラインを反復横跳びしている女神ユノだけで回すなんて、ブラック企業どころの騒ぎじゃない。
過労死して異世界転生したのに、また過労死して次の世界へドロップアウトすることになる。
「というわけで、テーマパークは諦める」
「えぇ〜!卓球場楽しみにしてたのにぃ」
不満げに頬を膨らませるユノを無視して、俺は宣言した。
「だが、最低限の防衛策として、『男湯』と『女湯』は分けることにする!」
これなら、もし勇者と魔王が同時に来ても、物理的に隔離できる。
あの戦乙女のヴァルシアに関しては、普段は戦場で忙しいらしく頻繁には来られないとのことなので、「来るなら絶対に予約を入れろ。さもなくば出禁」とユノ経由で厳命しておいた。
さて、場所を分けたとしても、掃除する場所と管理する場所が二倍になったことに変わりはない。
俺は真剣な眼差しでユノに向き直った。
「ユノ。バイトを雇おう」
「バイト、ですか?」
「そうだ。俺とお前だけじゃ手が足りない。神様ネットワークで、暇してる女神とかいないのか?」
俺の問いに、ユノは「うーん」と人差し指を顎に当てて考え込む。
「『アスちゃん』とか、今めっちゃ暇してるって言ってましたよ?」
「誰だそのアスちゃんって」
「正義と天秤の女神、アストレアちゃんです!悪を許さない性格で、すっごく真面目ですよ!」
俺は食い気味に「却下!」と叫んだ。
「ダメに決まってるだろ!『正義』とか一番やばい属性じゃねーか!魔王が来たら問答無用で断罪スタートだろ!店が壊れるわ!」
「えぇー。真面目なのにぃ」
「もっとこう……魔王と鉢合わせしても『あらあら〜』で済ませてくれそうな、温厚なヤツはいないのか?あと、お前みたいに勝手に仕事を増やさないヤツ!」
「私、勝手に増やしてませんよ! クリエイティブな提案をしてるだけです!」
ユノはむぅっと口を尖らせたが、すぐにまたポンと手を叩いた。
「あ、じゃあ『セレーネちゃん』なんてどうですか?月と癒やしの女神なんですけど、性格はおっとり系で、争い事とか大嫌いですし」
「月と癒やし……」
その響き、悪くない。
月の女神なら、夜の露天風呂とか映えそうだし、癒やし属性なら温泉宿との相性も抜群だ。何より『おっとり』というのがいい。魔王を見ても悲鳴を上げたり剣を抜いたりしなさそうだ。
「よし、そのセレーネさんだ。一回面接してみよう」
◆
数日後の夜。
空に細い月が浮かぶ頃、その女神はやってきた。
「はじめましてぇ……。セレーネと……申しますぅ……」
現れたのは、夜空を溶かしたような銀色の長い髪を持つ、儚げな美女だった。
少し眠そうなとろんとした瞳に、透き通るような白い肌。ユノもぱっと見は麗しい美人だが内面はアレなので、こちらは深窓の令嬢といった雰囲気だ。
(こ、これだ……!俺が求めていた癒やしは!)
俺は心の中でガッツポーズをした。
物腰も柔らかいし、言葉遣いも丁寧だ。これなら接客も安心して任せられる。
「採用です! ぜひウチで働いてください!」
「えぇ……?いいんですかぁ……?私、動作が遅いってよく言われるんですけどぉ……」
「構いません!そのゆったりとした動作こそが、お客様に安らぎを与えるんです!」
俺は即決で契約書にサインをもらった。
これで《ゆのや》の未来は安泰だ。俺の負担も減って、念願のスローライフに一歩近づいた……はずだった。
◆
数日後。
「……起きない」
俺は、従業員控え室(ただの物置)で、呆然と立ち尽くしていた。
新入りのセレーネが、布団にくるまったままピクリとも動かないのだ。
「おい、セレーネさん?もう開店時間だぞ?」
「ぅぅ……むにゃ……今夜は……新月だからぁ……無理ぃ……」
布団の中から、消え入りそうな声が聞こえてくる。
俺は慌ててフロントにいるユノを呼びつけた。
「おいユノ!セレーネさんがなんか弱ってるぞ!病気か!?」
ユノは布団の塊を見るなて、「あぁそうでした」と何でもないような風に答えた。
「店長、言い忘れてました。セレーネちゃん、月の女神なんで、月の満ち欠けに体調が超リンクするんです」
「は?」
「満月の前後三日間くらいはめっちゃ元気で輝いてるんですけど、それ以外の日はだいたいこんな感じで、布団とお友達です」
「……え、じゃあ働けるのって、一ヶ月に数日だけ?」
「そうなりますね!特に新月の日は、存在が消えかけるくらい省エネモードになります!」
「つかえねーーー!!」
俺の叫び声が、虚むなしく響き渡る。
布団の塊からは「すぅ……すぅ……」と寝息が聞こえ始めた。
こうして、温泉宿《ゆのや》に新しい仲間が増えた。
ただし、戦力になるのは月に数日だけという、レアキャラ仕様の女神様だった。
俺はため息をつきながら、結局今日も一人で風呂掃除に向かうのだった。
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