社畜だった俺が異世界で温泉宿を始めたら、なぜか女神と魔王が常連客になりました。
制作者:
Zelt
ラノベ風
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
概要
■登場人物
・主人公(元社畜)平穏な第二の人生を送りたいが、なぜかトラブル体質
・ユノ(女神)金髪・白いワンピース・背中に小さな羽。儚げな微笑みが印象的。実はかなりの自由人で、細かいことは全部人任せ。
・魔王(魔王さま)漆黒のローブ・美しい容貌・角が生えている。強大な魔族の王だが、部下が不甲斐なくて常に疲れてる。意外と庶民的。
・勇者 魔王を倒すために旅に出てる勇者。成長途上で魔王四天王に苦戦してる。この度《ゆのや》の常連となる
「丸投げかよ!!」
俺の絶叫は、こだますることもなく湯けむりに吸い込まれて消えた。 目の前には山積みの温泉卵。 そして「じゃ、私、温泉の管理に戻りますね♪」と、さっさと奥(たぶん源泉)に引っ込んでいく女神ユノ。
「……どうしろと」
宣伝? 誰に? この森の中で? 俺は途方に暮れ、その場にしゃがみ込んだ。 社畜時代、無茶ぶりな営業目標を押し付けられた日のことを思い出す。 異世界に来ても、やることは変わらないのか……。
その時だった。
ガサガサッ、と茂みが大きく揺れた。
「……!」
獣か? いや、それにしては金属音がする。 俺が身構えていると、森の中からよろよろと人影が現れた。
「すまない……誰か、いるか……?」
現れたのは、ボロボロの男だった。 ところどころ破損した銀色の鎧。泥と、何かの体液で汚れている。 腰に差した剣は、無残にも根元から折れていた。
(うわぁ……満身創痍じゃねぇか)
男は俺の姿を認めると、ふらつきながら一歩近づいた。
「すまないが、……。少しでいい、休ませてくれ…」
客だ! 魔王以来の、二人目の客! 俺は慌てて駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか! どうぞ、こちらへ!」
「助かる……。俺は、勇者……いや、今はただの敗残兵だ……」
「……はい?」
俺は男の顔を見て、固まった。 勇者? 今、勇者って言ったか?
「魔王軍の四天王に、またしても敗れて……もう、心も体も……」
勇者はそう言うと、俺の肩にもたれかかるようにして意識を失いかけた。
「おい! しっかりしろ!」
俺は必死で勇者を支え、宿の中へ引きずり込む。 (やばい、やばい、やばい!)
頭の中で警報が鳴り響く。 勇者ってことは、魔王の敵だよな!? もし、あの魔王(常連客)がまた「肩こりが〜」とか言ってやってきたらどうなる? この宿、更地になるんじゃないか?
(まずい! 早く帰さねば!)
俺は、意識を取り戻しかけた勇者に、鬼の心で告げた。
「あー……お客さん。すまないけど、ウチ、今ちょっとお湯の調子が悪くて……」
「そんな……。この匂いは、極上の湯だと……俺の鼻が言っている……」
「いや、それがですね、急に冷たくなったり熱くなったりで! とても入れる状態じゃ……」
俺が必死に嘘をついていると、奥からパタパタと足音が聞こえてきた。 最悪のタイミングで、あのポンコツ女神が戻ってきた。
「まぁ! お客様! ひどいお怪我です!」
ユノは勇者の姿を見るなり、目を輝かせた(ように見えた)。
「いけません! そんなお体では! さぁ、すぐに《ゆのや》の癒しを!」
「おい、ユノ! 今、湯の調子が……」
「大丈夫です、店長! 私が神気(しんき)を込めて、最高のコンディションにしておきましたから!」
「(余計なことをォォォ!!)」
ユノはにっこりと微笑み、勇者の腕を取った。 「ささ、脱衣所はこちらです。ゆっくり浸かって、傷を癒してくださいね♪」
「あ……あぁ。すまない、女神さま……?」
勇者は、ユノの神々しい(?)雰囲気と優しさに、すっかり警戒を解いている。 そのまま、ふらふらと湯殿のほうへ消えていった。
「…………」
俺は、ロビー(とも呼べないただの板の間)で一人、胃を押さえた。 頼む。 頼むから、魔王、今日は来るなよ……!
俺の絶叫は、こだますることもなく湯けむりに吸い込まれて消えた。 目の前には山積みの温泉卵。 そして「じゃ、私、温泉の管理に戻りますね♪」と、さっさと奥(たぶん源泉)に引っ込んでいく女神ユノ。
「……どうしろと」
宣伝? 誰に? この森の中で? 俺は途方に暮れ、その場にしゃがみ込んだ。 社畜時代、無茶ぶりな営業目標を押し付けられた日のことを思い出す。 異世界に来ても、やることは変わらないのか……。
その時だった。
ガサガサッ、と茂みが大きく揺れた。
「……!」
獣か? いや、それにしては金属音がする。 俺が身構えていると、森の中からよろよろと人影が現れた。
「すまない……誰か、いるか……?」
現れたのは、ボロボロの男だった。 ところどころ破損した銀色の鎧。泥と、何かの体液で汚れている。 腰に差した剣は、無残にも根元から折れていた。
(うわぁ……満身創痍じゃねぇか)
男は俺の姿を認めると、ふらつきながら一歩近づいた。
「すまないが、……。少しでいい、休ませてくれ…」
客だ! 魔王以来の、二人目の客! 俺は慌てて駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか! どうぞ、こちらへ!」
「助かる……。俺は、勇者……いや、今はただの敗残兵だ……」
「……はい?」
俺は男の顔を見て、固まった。 勇者? 今、勇者って言ったか?
「魔王軍の四天王に、またしても敗れて……もう、心も体も……」
勇者はそう言うと、俺の肩にもたれかかるようにして意識を失いかけた。
「おい! しっかりしろ!」
俺は必死で勇者を支え、宿の中へ引きずり込む。 (やばい、やばい、やばい!)
頭の中で警報が鳴り響く。 勇者ってことは、魔王の敵だよな!? もし、あの魔王(常連客)がまた「肩こりが〜」とか言ってやってきたらどうなる? この宿、更地になるんじゃないか?
(まずい! 早く帰さねば!)
俺は、意識を取り戻しかけた勇者に、鬼の心で告げた。
「あー……お客さん。すまないけど、ウチ、今ちょっとお湯の調子が悪くて……」
「そんな……。この匂いは、極上の湯だと……俺の鼻が言っている……」
「いや、それがですね、急に冷たくなったり熱くなったりで! とても入れる状態じゃ……」
俺が必死に嘘をついていると、奥からパタパタと足音が聞こえてきた。 最悪のタイミングで、あのポンコツ女神が戻ってきた。
「まぁ! お客様! ひどいお怪我です!」
ユノは勇者の姿を見るなり、目を輝かせた(ように見えた)。
「いけません! そんなお体では! さぁ、すぐに《ゆのや》の癒しを!」
「おい、ユノ! 今、湯の調子が……」
「大丈夫です、店長! 私が神気(しんき)を込めて、最高のコンディションにしておきましたから!」
「(余計なことをォォォ!!)」
ユノはにっこりと微笑み、勇者の腕を取った。 「ささ、脱衣所はこちらです。ゆっくり浸かって、傷を癒してくださいね♪」
「あ……あぁ。すまない、女神さま……?」
勇者は、ユノの神々しい(?)雰囲気と優しさに、すっかり警戒を解いている。 そのまま、ふらふらと湯殿のほうへ消えていった。
「…………」
俺は、ロビー(とも呼べないただの板の間)で一人、胃を押さえた。 頼む。 頼むから、魔王、今日は来るなよ……!
このパートからの分岐 (1)
ストーリーツリー(階層表示)
マウスドラッグで移動、スクロールでズーム | ノードクリック:パート詳細へ | +/-ボタン:展開/折りたたみ
人気のリレー小説
みんなが注目している作品
感想