社畜だった俺が異世界で温泉宿を始めたら、なぜか女神と魔王が常連客になりました
制作者:
Zelt
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
概要
■登場人物
・主人公(元社畜)平穏な第二の人生を送りたいが、なぜかトラブル体質。現在は《ゆのや》の店長。
・ユノ(温泉の女神)金髪・白いワンピース・背中に小さな羽。儚げな微笑みが印象的。実はかなりの自由人で、細かいことは全部人任せ。
・魔王(魔王さま)漆黒のローブ・美しい容貌・角が生えている。強大な魔族の王だが、部下が不甲斐なくて常に疲れてる。意外と庶民的。
・勇者 魔王を倒すために旅に出てる勇者。成長途上で魔王四天王に苦戦してる。
・ヴァルキリー(戦乙女) ヴァルシア。燃えるような赤い髪。銀色の鎧。白銀の翼。巨大な槍を持つ。美しいが男勝りの性格
・セレーネ(月と癒やしの女神)銀色の長い髪を持つ美女。満月に近い日は元気だが、新月に近づくごとに寝る時間が増える。
・主人公(元社畜)平穏な第二の人生を送りたいが、なぜかトラブル体質。現在は《ゆのや》の店長。
・ユノ(温泉の女神)金髪・白いワンピース・背中に小さな羽。儚げな微笑みが印象的。実はかなりの自由人で、細かいことは全部人任せ。
・魔王(魔王さま)漆黒のローブ・美しい容貌・角が生えている。強大な魔族の王だが、部下が不甲斐なくて常に疲れてる。意外と庶民的。
・勇者 魔王を倒すために旅に出てる勇者。成長途上で魔王四天王に苦戦してる。
・ヴァルキリー(戦乙女) ヴァルシア。燃えるような赤い髪。銀色の鎧。白銀の翼。巨大な槍を持つ。美しいが男勝りの性格
・セレーネ(月と癒やしの女神)銀色の長い髪を持つ美女。満月に近い日は元気だが、新月に近づくごとに寝る時間が増える。
昼下がり。
陽光が湯気を金色に染める時間帯。
玄関が開いた。
「よう、店長。また世話になる」
勇者だ。
銀の鎧は前より輝いてる。傷もない。
後ろに、二人の影。
「あら、素敵な温泉宿ね」
一人は女性。
深い青のローブに、とがった帽子。
魔法使いか。長い黒髪が背中で揺れてる。
「勇者殿がずっと『いい湯だ』って言うから、気になってたんですよ」
もう一人は男性。
白い法衣。優しそうな顔。癒し手——ヒーラーだな。
「今日は仲間も連れてきた。三人分、頼めるか?」
「あ、ああ……。どうぞ……」
俺は三人を男湯へ案内した。
◆
「パーティ、増えたんだな」
湯上がりの勇者に、なんとなく聞いた。
縁側で、三人並んで温泉饅頭を食ってる。
「ああ。魔王軍を倒すには、一人じゃ限界があってな」
魔法使いの女——名前はミラといったか——が、饅頭を頬張りながら言う。
「四天王のゲイルが戦線離脱したって情報、聞きました?」
「……え?」
「なんか大火傷して、動けなくなったらしいですよ。どこで何があったのか、誰も知らないんですけど」
……俺は知ってる。
ていうか、犯人は今、裏で源泉の掃除してる。
「チャンスなんです」
ヒーラーの男——リオって名前だ——が真剣な顔で続ける。
「四天王が一人欠けた今、攻勢に出れば……」
「魔王の首に、手が届くかもしれない」
勇者が静かに言った。
その目には、強い光が宿ってる。
前に来た時のボロボロの姿が嘘みたいだ。
徐々に……パワーアップしてるな、こいつら。
俺は湯呑みを握りしめた。
(いつか……魔王様と戦うんだろうな)
胸がざわついた。
ちょっと心配になる。
……どっちに対して?
◆
勇者一行が滞在している間、俺はずっとひやひやしてた。
いつものパターンで魔王様とはち合ったらどうしようとか、四天王たちが仇討ちに来たらどうしよう、とか。
でも——何事もなく、勇者たちは旅立っていった。
「世話になった。また来る」
「ああ……。気をつけてな」
三人の背中が、森の中に消えていく。
俺はほっと息をついた。
……安堵。そのはずだった。
◆
一日。
二日。
三日——
「……来ないな」
俺は、魔王様専用のVIP湯船を眺めていた。
湯気だけが、静かに立ち昇ってる。
「魔王さま、最近いらっしゃいませんねぇ」
ユノが隣でのんきに言う。
「ああ……」
「戦争でお忙しいのかも。勇者さんたち、攻めてるみたいですし」
「……そうだな」
俺は湯船の縁に腰を下ろした。
ぬるま湯が、指先を濡らす。
魔王様がいない《ゆのや》。
静かで、平和で——
「……なんか、物足りねぇな」
口から勝手に出た。
ユノが不思議そうな顔で俺を見る。
「店長?」
「いや……なんでもない」
俺は首を振って、立ち上がった。
でも、胸の奥がざわざわする。
◆
その夜。
俺は布団の中で、天井を見つめていた。
魔王様の顔が浮かぶ。
漆黒のローブ。
白い肌。
鋭い角。
でも、湯上がりの時は——
「……ふぅ、極楽ね」
って、ちょっと笑うんだよな。あの人。
サウナでトトノった時の、とろけた顔。
マッサージの時の、油断した寝顔。
饅頭を「甘すぎる」って言いながら、結局全部食べる姿。
——かわいい、と思った。
「…………」
俺は布団を頭からかぶった。
(いや待て待て待て)
心臓がうるさい。
なんだこれ。
(え? 俺ってまさか……魔王様のことが……)
ぶんぶんと首を振る。
布団の中が暑い。
(いやいやいや! 世界征服しようとしてる魔王様だぞ!?)
人間を虫けらだと思ってる。
四天王を従えてる。
勇者と戦争してる。
(いくら美人だからって……)
でも、脳裏に浮かぶのは——
「また来るわ」って、ちょっと照れたように言う横顔。
「…………くそ」
俺は枕に顔を埋めた。
眠れない夜が、ゆっくりと更けていく。
湯けむりの向こうに、月だけが静かに浮かんでいた。
陽光が湯気を金色に染める時間帯。
玄関が開いた。
「よう、店長。また世話になる」
勇者だ。
銀の鎧は前より輝いてる。傷もない。
後ろに、二人の影。
「あら、素敵な温泉宿ね」
一人は女性。
深い青のローブに、とがった帽子。
魔法使いか。長い黒髪が背中で揺れてる。
「勇者殿がずっと『いい湯だ』って言うから、気になってたんですよ」
もう一人は男性。
白い法衣。優しそうな顔。癒し手——ヒーラーだな。
「今日は仲間も連れてきた。三人分、頼めるか?」
「あ、ああ……。どうぞ……」
俺は三人を男湯へ案内した。
◆
「パーティ、増えたんだな」
湯上がりの勇者に、なんとなく聞いた。
縁側で、三人並んで温泉饅頭を食ってる。
「ああ。魔王軍を倒すには、一人じゃ限界があってな」
魔法使いの女——名前はミラといったか——が、饅頭を頬張りながら言う。
「四天王のゲイルが戦線離脱したって情報、聞きました?」
「……え?」
「なんか大火傷して、動けなくなったらしいですよ。どこで何があったのか、誰も知らないんですけど」
……俺は知ってる。
ていうか、犯人は今、裏で源泉の掃除してる。
「チャンスなんです」
ヒーラーの男——リオって名前だ——が真剣な顔で続ける。
「四天王が一人欠けた今、攻勢に出れば……」
「魔王の首に、手が届くかもしれない」
勇者が静かに言った。
その目には、強い光が宿ってる。
前に来た時のボロボロの姿が嘘みたいだ。
徐々に……パワーアップしてるな、こいつら。
俺は湯呑みを握りしめた。
(いつか……魔王様と戦うんだろうな)
胸がざわついた。
ちょっと心配になる。
……どっちに対して?
◆
勇者一行が滞在している間、俺はずっとひやひやしてた。
いつものパターンで魔王様とはち合ったらどうしようとか、四天王たちが仇討ちに来たらどうしよう、とか。
でも——何事もなく、勇者たちは旅立っていった。
「世話になった。また来る」
「ああ……。気をつけてな」
三人の背中が、森の中に消えていく。
俺はほっと息をついた。
……安堵。そのはずだった。
◆
一日。
二日。
三日——
「……来ないな」
俺は、魔王様専用のVIP湯船を眺めていた。
湯気だけが、静かに立ち昇ってる。
「魔王さま、最近いらっしゃいませんねぇ」
ユノが隣でのんきに言う。
「ああ……」
「戦争でお忙しいのかも。勇者さんたち、攻めてるみたいですし」
「……そうだな」
俺は湯船の縁に腰を下ろした。
ぬるま湯が、指先を濡らす。
魔王様がいない《ゆのや》。
静かで、平和で——
「……なんか、物足りねぇな」
口から勝手に出た。
ユノが不思議そうな顔で俺を見る。
「店長?」
「いや……なんでもない」
俺は首を振って、立ち上がった。
でも、胸の奥がざわざわする。
◆
その夜。
俺は布団の中で、天井を見つめていた。
魔王様の顔が浮かぶ。
漆黒のローブ。
白い肌。
鋭い角。
でも、湯上がりの時は——
「……ふぅ、極楽ね」
って、ちょっと笑うんだよな。あの人。
サウナでトトノった時の、とろけた顔。
マッサージの時の、油断した寝顔。
饅頭を「甘すぎる」って言いながら、結局全部食べる姿。
——かわいい、と思った。
「…………」
俺は布団を頭からかぶった。
(いや待て待て待て)
心臓がうるさい。
なんだこれ。
(え? 俺ってまさか……魔王様のことが……)
ぶんぶんと首を振る。
布団の中が暑い。
(いやいやいや! 世界征服しようとしてる魔王様だぞ!?)
人間を虫けらだと思ってる。
四天王を従えてる。
勇者と戦争してる。
(いくら美人だからって……)
でも、脳裏に浮かぶのは——
「また来るわ」って、ちょっと照れたように言う横顔。
「…………くそ」
俺は枕に顔を埋めた。
眠れない夜が、ゆっくりと更けていく。
湯けむりの向こうに、月だけが静かに浮かんでいた。
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