社畜だった俺が異世界で温泉宿を始めたら、なぜか女神と魔王が常連客になりました。

制作者: Zelt ラノベ風
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概要

第2話 女神はポンコツ?
蒼月(そうげつ)
2025年10月27日 15:57
魔王が帰っていった 。 「ふぅ、悪くない湯だったわ。また来る」 それだけ言い残して、黒い霧と共に消えてしまった。 ……結局、湯銭はもらってない。

俺は脱衣所に一人、取り残された。 いや、一人じゃない。

「ぷはー! 極楽、ごくらく!」

「ユノ!」

俺をこの世界に呼び出した張本人、温泉の女神ユノが 、なぜか一緒に入浴を終えて出てきた。 あの白いワンピース はどこへやら、今は簡素な湯あみ着だ。 湯気で肌がツヤツヤしている。

「あんた! なんで魔王と一緒に入ってるんですか! しかも常連みたいに!」 「え? だって魔王さん、肩こりがひどいって言ってたから。癒しを広めるのが私の使命ですし? 」 ユノは「えっへん」と胸を張る。

「そういうことじゃなくて! 魔王ですよ、魔王! この宿が壊されたらどうするんですか!」 「大丈夫ですよー。あ、そうだ。宿の経営、頑張ってくださいね、店長♪」 「店長!?」

俺は宿《ゆのや》の経営なんて引き受けた覚えはない。 ユノが勝手にこの建物を出現させたんじゃないか。

「ちょっと待て! 俺は経営なんてやったことないぞ! そもそも、この宿 の運営費とか、食材とか、どうなってるんだ!」 「え?」 ユノはきょとん、と首をかしげた。 その金髪がさらりと揺れる。

「運営費? 食材?」 「当たり前だろ! 宿なんだから! 客が泊まる! 飯を食う! 金をもらう! そのサイクルだろ!」 ブラック企業で叩き込まれたのは、そういう「回す」ことだけだ。

「あー……。大丈夫、大丈夫。私、温泉を管理しますから」 「温泉だけかよ!」 「温泉こそが癒しです! 」 「それじゃ宿は回らない!」

この女神 、ダメだ。ポンコツだ。 温泉のことしか頭にない。 俺が頭を抱えていると、ユノは「あ!」と何か閃いた顔をした。

「そうだ! 食べ物ですね! 任せてください!」 ユノがぱちん、と指を鳴らす。 すると、俺の目の前に、湯気の立つ大きなザルが「ドン」と出現した。

中身は……

「……温泉卵」 「はい! 私の神気(しんき)を込めた、特製温泉卵です! これを売れば万事解決!」 「……卵だけ?」 「卵だけです!」

俺は天を仰いだ。 社畜だった俺が 、異世界に来てまでやることは、温泉卵の販売らしい。 しかも、仕入れ先は女神 。原価ゼロ。

「あの……ユノさま 」 「はい?」 「これ……どうやって売るんですか。客、さっきの魔王 しか来なかったぞ」 「うーん……それは、店長が頑張って宣伝してください!」

「丸投げかよ!!」

俺の絶叫が、湯けむりの中に消えていく。 癒しの宿《ゆのや》 の経営は、前途多難すぎる。
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勇者様ご来店

「丸投げかよ!!」 俺の絶叫は、こだますることもなく湯けむりに吸い込まれて消えた。 目の前には山積...

あさり あさり
11/07 17:13
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「丸投げかよ!!」 俺の絶叫は、こだますることもなく湯けむりに吸い込まれて消えた。 目の前には山積...

あさり 0

勇者が湯殿に消えてから、まだ五分も経ってない。 なのに。 なのに! 玄関のほうから、聞きたくなか...

Zelt 1
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