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カナトとサンタの村

制作者: 冬至梅
小説設定: | 連続投稿: 不可 | 投稿権限: 全員 | 完結数: 25話で完結

概要

第5話 12月24日の夕方
冬至梅
2025年12月09日 18:46 | 59
それから三日間はとても静かでした。カナトはこたつに足を入れて冬休みの宿題をしたり、持ってきていた漫画を読み返したりして過ごしました。それでも胸の奥はどこか空っぽで、窓の向こうから時おり聞こえる知らない子どもたちのはしゃぐ声が、その空洞をちくりと刺すようでした。

 そして迎えた12月24日の夕方、外は茜色の光が雲の端を照らし、冷たい風が微かに木々を揺らしていました。そんな中、おじいちゃんとおばあちゃんが慌ただしい足音とともにカナトの部屋を訪れました。

「……あー、カナト……」

 おじいちゃんは帽子を握りしめながら言いました。

「じいちゃんの姉さんがな……具合を悪くしたらしいんだ。わしらは今すぐ行かにゃならん。帰るのは……遅くなると思う」

「ご飯は作ってあるから、食べれるだけ食べてね」

 おばあちゃんは、煮物の香りをほのかに残した手でカナトの肩をそっとさすりました。

 おじいちゃんとおばあちゃんは玄関でコートを羽織り、ばたばたと出ていきました。カナトがその背中を見送ると、しんとした夕暮れの空気が家の中に入り込んできました。

 自分の部屋に戻ると、カナトは机のノートの下に隠していた金色のカードを取り出しました。カードは光を受けて、まるで脈打つように輝いています。今日は、カードに書かれていた12月24日。午後8時、北極、サンタクロースの村——。

 カナトは、ふるりと胸の奥が震えるのを感じながら、「北極なんて、今から行けるわけないって」と、自分に言い聞かせるように小さく呟きました。

 外は夕闇が降り、家の前を歩く人影も次第に少なくなっていきます。寒い風が軒先をかすかに揺らすその向こうで、カナトの知らないところでは——空の高みから、何かが静かに、確かに近づいてきていました。
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このパートからの分岐 (1)
星からの迎え

掛け時計の針が、ゆっくりと時を刻んでいました。  カチ、カチ、という乾いた音が、誰もいない居間に響...

迦楼羅 迦楼羅
12/12 16:27
全階層の表示(9件)
第1話 三枚のチケット 冬至梅 0 77
・北極の空は、冬の星々が瞬き、ひんやりと透き通っていました。サンタクロースの村では...
第2話 空から落ちてきた招待状 あさり 1 67
・鉛色の空。 絵の具を水で溶かずにそのまま塗ったような、重たいグレー。 カナトはた...
第3話 茶色い食卓 冬至梅 0 58
・家に入ると、台所から煮物の香りがふわりと漂い、カナトはおばあちゃんと無口なおじい...
第4話 期待と希望 あさり 1 63
・「カナト、少し痩せた?」 おばあちゃんが、煮物をお代わりする手を止めて、優しく...
第5話 12月24日の夕方 冬至梅 0 60
・それから三日間はとても静かでした。カナトはこたつに足を入れて冬休みの宿題をしたり...
第6話 星からの迎え 迦楼羅 1 55
・掛け時計の針が、ゆっくりと時を刻んでいました。  カチ、カチ、という乾いた音が...
第7話 エルフ 冬至梅 0 51
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第8話 3人の子供たち 蒼月(そうげつ) 1 50
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NEW 第9話 円盤の故障 冬至梅 0 46
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