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その時、〇〇がこう言った

制作者: さんぽ
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員

概要

第5話 デバッグ作業は猫の手も借りたい
ケンヂ
2025年12月29日 11:16 | 34
「おい、そこの無職。貴様の人生、デバッグしてやろうか?」

猫は、鳴き声の代わりに完璧な標準語を喋った。
霧島は、持っていた空の缶コーヒーをアスファルトに落とした。乾いた金属音が、静まり返った街に不自然に響く。
「ね、猫が……喋った?」
「驚くポイントがそこか? 空が割れて概念が漏れ出している異常事態に比べれば、猫の一匹や二匹、言語を習得していても不思議ではないだろう」

猫は、面倒くさそうに前足で耳の後ろをかいた。その仕草はどこまでも猫だが、その瞳には知性が宿っている。
冬月マヤは、驚きよりも好奇心が勝ったのか、しゃがみ込んで猫の顔を覗き込んだ。
「あなた、もしかしてこの世界の観測者なの?」
「観測者なんて格好いいもんじゃない。私はただのシステムログ……まあ、この世界の運営が残した『書き残し』のようなものだ」
猫は瓦礫の山を器用に登り、霧島とマヤを見下ろした。

「いいか、人間。この世界は今、深刻な論理エラーを起こしている。物語が結末を失い、意味が消失したことで、宇宙という名のプログラムが強制終了シャットダウンしようとしているんだ」
霧島は、自分が元プログラマーだったことを思い出し、猫の言葉を必死に理解しようとした。
「プログラムが終了……? つまり、この消去の波は、メモリの解放だって言うのか?」
「察しがいいな、無職。だが、さっきの女の『二次創作』のおかげで、面白い例外が発生した。物語を強引に書き換えたことで、システムが一時停止している」

猫は金色の瞳を細め、マヤが持っているノートを指した。
「そこにお前たちの『最終回』を書き込め。それが世界というシステムにとって納得のいくコード……つまり、美しい物語であれば、世界は再起動リブートされる可能性がある」
空の亀裂が、雷鳴のような音を立ててさらに広がった。

霧島はマヤから手渡されたペンを握りしめた。手汗で滑りそうになるが、不思議と足の震えは止まっていた。
「俺が、コード……じゃなくて、物語を書くのか? そんな大層なこと……」
「お前の人生はバグだらけだったかもしれない。だがな、バグがあるからこそ、システムは予想外の進化を遂げるんだ。書け、霧島。お前という物語の、本当の終わりを」
猫はそう言うと、霧島の肩に飛び乗った。ずしりとした重みが、生の実感となって彼を突き動かす。
霧島はノートにペン先を落とした。最初の一文字。それは彼がずっと言いたかった、自分自身への言葉だった。

そして――その時、霧島はこう言った。
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このパートからの分岐 (1)
待て

「待て」 たった二文字。 だが、その瞬間。 世界が本気で困惑した。 空に走っていた亀裂が、ぎぎ...

さんぽ さんぽ
01/02 08:56
全階層の表示(11件)
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・世界が終わる三分前、駅前の自販機だけが普通に稼働していた。 赤く光る「つめた〜い...
第2話 あれを見ずには終われない 蒼月(そうげつ) 0 44
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第3話 確実に二次創作 さんぽ 0 36
・「大丈夫よ――世界が終わる前に、私が全部の最終回を書いてあげる。作者が死んでも、物...
第4話 最後に残るもの クロマル 0 33
・「俺の……俺の最終回?……そんなの、わかんねぇよ」 霧島は、その言葉を口の中で転が...
第5話 デバッグ作業は猫の手も借りたい ケンヂ 0 35
・「おい、そこの無職。貴様の人生、デバッグしてやろうか?」 猫は、鳴き声の代わり...
第6話 待て さんぽ 0 38
・「待て」 たった二文字。 だが、その瞬間。 世界が本気で困惑した。 空に走...
第7話 朝焼け クロマル 0 29
・「この物語の続きは、俺が死ぬまで『未完』のままだ!」 霧島が叫んだ言葉は、裂け...
第8話 考察勢 さんぽ 0 32
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第9話 伏線は、あなた自身 蒼月(そうげつ) 0 17
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第5話 猫の手を借りた さんぽ 0 28
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