その時、〇〇がこう言った
制作者:
さんぽ
小説設定:
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連続投稿: 可
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投稿権限:
全員
概要
ジャンルも何もかも自由ですが、その話の最後は「その時、〇〇(人物名)はこう言った」で締め、ぶっ飛んだ言葉で次話を始めてみたいです。
「「終わらせなくていい」」
二人の声が重なった。
猫が目を見開く。女子高生がスマホを取り落としそうになる。
「……本気か? 終わりのない物語は、地獄だぞ」
猫の声には、どこか切実な響きがあった。
「知ってるよ」
霧島は静かに答えた。
三十八年間、ずっと終わりを怖がって生きてきた。締め切りも、人間関係も、自分の将来も。終わりが来る前に逃げ出すことで、傷つくことを避けてきた。
でも、それは違ったのだ。
「終わりがないから地獄なんじゃない」
マヤが、霧島の言葉を引き継ぐように続けた。
「終わりを決めつけて、続きを諦めることが地獄なのよ」
猫は長い沈黙の後、ふっと息を吐いた。
「……お前たち、本当に面倒くさい生き物だな」
その声には、どこか安堵のような色が滲んでいた。
「いいだろう。世界は『未完』のまま続く。ただし、一つだけ条件がある」
「条件?」
「この物語を、誰かに語り継げ。読まれ続ける限り、世界は存在し続ける。それが、お前たちが選んだ未完の代償だ」
女子高生が勢いよく手を挙げた。
「あっ、それ私できます! 考察スレに投稿すれば一瞬で広まりますよ!」
「……そういうことじゃないんだが」
猫が呆れた声を出したが、もう遅かった。
空の亀裂は完全に閉じ、世界は柔らかな朝の光に包まれていく。
遠くで、電車の発車メロディが聞こえた。
止まっていた時間が、また動き出している。
霧島は、ふと気づいた。
マヤが持っていたノートが、いつの間にか消えている。
「あれ、ノートは?」
「ああ、あれね」
マヤは少し照れくさそうに笑った。
「世界の一部になったみたい。私たちが書いた言葉が、この世界の新しいコードになったのよ」
「じゃあ、俺が書いた『待て』も……」
「ええ。きっと、この世界のどこかで、誰かが立ち止まるたびに、あなたの言葉が響いてるわ」
霧島は、なんだかむず痒いような、でも悪くない気持ちになった。
猫が、ふわりと瓦礫から飛び降りた。
「さて、私の役目は終わりだ。次に世界が壊れそうになったら、また会おう」
「おい、待てよ。お前、名前は?」
猫は振り返り、金色の瞳を細めた。
「名前か。そうだな……『ログ』とでも呼んでくれ。お前たちの物語を記録し続ける者、という意味でな」
そう言い残して、猫は朝もやの中に消えていった。
女子高生はスマホをポケットにしまい、ぺこりと頭を下げた。
「じゃあ私も行きますね! 学校遅刻しちゃうんで! あ、でも今日って何曜日でしたっけ? 世界再起動したから曜日感覚バグってて……」
「知らねぇよ」
霧島が苦笑すると、女子高生はけらけらと笑いながら改札の向こうへ走っていった。
静けさが戻る。
霧島とマヤは、崩れかけた街並みの中で、二人きりになった。
「……なあ、冬月さん」
「マヤでいいわよ。世界を一緒に救った仲なんだから」
「じゃあ、マヤさん」
霧島は、少し緊張しながら言った。
「本屋、いつ開くんだ?」
マヤは、崩れたビルの方を見やった。三階にあったはずの書店は、もう影も形もない。
「さあ、どうかしら。でも、本さえあればどこでも本屋はできるわ」
「……俺、手伝おうか。力仕事くらいなら」
マヤは目を丸くした。それから、花が咲くように笑った。
「あら、無職のままでいいの?」
「良くねぇよ。だから働く」
自分でも驚くほど、自然に言葉が出た。
霧島は空を見上げた。雲一つない、澄んだ青空。あの亀裂があったことが嘘のようだ。
でも、確かにあった。
世界が終わりかけて、自分が叫んで、誰かと出会って、何かが変わった。
それは、ありきたりな物語かもしれない。
でも、自分だけの物語だ。
「なあ、マヤさん」
「なに?」
「俺の人生、まだ序章なのかな」
マヤは少し考えてから、首を横に振った。
「ううん。もう十分、中盤よ。クライマックスはこれから」
「……そっか」
霧島は、ポケットに手を突っ込んだ。空になった缶コーヒーの感触はもうない。代わりに、さっき自販機で買ったもう一本が、まだ冷たいまま残っていた。
「コーヒー、飲むか?」
「いただくわ」
プルタブを開ける音が、静かな朝に響いた。
世界が終わる三分前に始まった物語は、こうして終わらないまま、続いていく。
それは、最終回ではない。
ただの、新しい一日の始まりだ。
缶コーヒーを分け合いながら、二人は崩れた街を歩き出した。
どこへ向かうかは、まだ決まっていない。
でも、それでいい。
未完という名の物語は、いつだって次のページをめくる余白を残している。
そして――その時、世界はこう言った。
二人の声が重なった。
猫が目を見開く。女子高生がスマホを取り落としそうになる。
「……本気か? 終わりのない物語は、地獄だぞ」
猫の声には、どこか切実な響きがあった。
「知ってるよ」
霧島は静かに答えた。
三十八年間、ずっと終わりを怖がって生きてきた。締め切りも、人間関係も、自分の将来も。終わりが来る前に逃げ出すことで、傷つくことを避けてきた。
でも、それは違ったのだ。
「終わりがないから地獄なんじゃない」
マヤが、霧島の言葉を引き継ぐように続けた。
「終わりを決めつけて、続きを諦めることが地獄なのよ」
猫は長い沈黙の後、ふっと息を吐いた。
「……お前たち、本当に面倒くさい生き物だな」
その声には、どこか安堵のような色が滲んでいた。
「いいだろう。世界は『未完』のまま続く。ただし、一つだけ条件がある」
「条件?」
「この物語を、誰かに語り継げ。読まれ続ける限り、世界は存在し続ける。それが、お前たちが選んだ未完の代償だ」
女子高生が勢いよく手を挙げた。
「あっ、それ私できます! 考察スレに投稿すれば一瞬で広まりますよ!」
「……そういうことじゃないんだが」
猫が呆れた声を出したが、もう遅かった。
空の亀裂は完全に閉じ、世界は柔らかな朝の光に包まれていく。
遠くで、電車の発車メロディが聞こえた。
止まっていた時間が、また動き出している。
霧島は、ふと気づいた。
マヤが持っていたノートが、いつの間にか消えている。
「あれ、ノートは?」
「ああ、あれね」
マヤは少し照れくさそうに笑った。
「世界の一部になったみたい。私たちが書いた言葉が、この世界の新しいコードになったのよ」
「じゃあ、俺が書いた『待て』も……」
「ええ。きっと、この世界のどこかで、誰かが立ち止まるたびに、あなたの言葉が響いてるわ」
霧島は、なんだかむず痒いような、でも悪くない気持ちになった。
猫が、ふわりと瓦礫から飛び降りた。
「さて、私の役目は終わりだ。次に世界が壊れそうになったら、また会おう」
「おい、待てよ。お前、名前は?」
猫は振り返り、金色の瞳を細めた。
「名前か。そうだな……『ログ』とでも呼んでくれ。お前たちの物語を記録し続ける者、という意味でな」
そう言い残して、猫は朝もやの中に消えていった。
女子高生はスマホをポケットにしまい、ぺこりと頭を下げた。
「じゃあ私も行きますね! 学校遅刻しちゃうんで! あ、でも今日って何曜日でしたっけ? 世界再起動したから曜日感覚バグってて……」
「知らねぇよ」
霧島が苦笑すると、女子高生はけらけらと笑いながら改札の向こうへ走っていった。
静けさが戻る。
霧島とマヤは、崩れかけた街並みの中で、二人きりになった。
「……なあ、冬月さん」
「マヤでいいわよ。世界を一緒に救った仲なんだから」
「じゃあ、マヤさん」
霧島は、少し緊張しながら言った。
「本屋、いつ開くんだ?」
マヤは、崩れたビルの方を見やった。三階にあったはずの書店は、もう影も形もない。
「さあ、どうかしら。でも、本さえあればどこでも本屋はできるわ」
「……俺、手伝おうか。力仕事くらいなら」
マヤは目を丸くした。それから、花が咲くように笑った。
「あら、無職のままでいいの?」
「良くねぇよ。だから働く」
自分でも驚くほど、自然に言葉が出た。
霧島は空を見上げた。雲一つない、澄んだ青空。あの亀裂があったことが嘘のようだ。
でも、確かにあった。
世界が終わりかけて、自分が叫んで、誰かと出会って、何かが変わった。
それは、ありきたりな物語かもしれない。
でも、自分だけの物語だ。
「なあ、マヤさん」
「なに?」
「俺の人生、まだ序章なのかな」
マヤは少し考えてから、首を横に振った。
「ううん。もう十分、中盤よ。クライマックスはこれから」
「……そっか」
霧島は、ポケットに手を突っ込んだ。空になった缶コーヒーの感触はもうない。代わりに、さっき自販機で買ったもう一本が、まだ冷たいまま残っていた。
「コーヒー、飲むか?」
「いただくわ」
プルタブを開ける音が、静かな朝に響いた。
世界が終わる三分前に始まった物語は、こうして終わらないまま、続いていく。
それは、最終回ではない。
ただの、新しい一日の始まりだ。
缶コーヒーを分け合いながら、二人は崩れた街を歩き出した。
どこへ向かうかは、まだ決まっていない。
でも、それでいい。
未完という名の物語は、いつだって次のページをめくる余白を残している。
そして――その時、世界はこう言った。
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