キング オブ バトル

制作者: クロマル ラノベ風
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員

概要

第5話 氷の原点
クロマル
2025年11月17日 17:31
鋼牙「ハッ……どうした? 天才さん。その程度か?」

鋼牙が煽る。鋼牙の「剛」の力。 それは、迅が最も嫌悪し、そして、心のどこかで恐れていた「力」そのものだった。 計算も、ロジックも、すべてを粉砕する理不尽なまでの熱量。

迅「……うるさい」

脳裏を、焼けた匂いと埃っぽい記憶がよぎる。

(……そうだ。俺の世界は、いつだって理不尽だった)

氷室迅の強さには、明確な「原点」がある。 彼が「計算」という名の刃を研ぎ澄ませるしかなかった理由。

それは、雨漏りが止まらない貧民窟スラムの片隅で、冷たくなっていく母の手を握りしめた日のことだ。 病名はわからない。医者に見せる金など、最初から無かった。 幼い迅は、悲しみよりも先に、強烈な「飢え」と「無力感」を覚えた。

残されたのは、三つ年上の姉と二人だけ。 姉は、自分の分け前である硬いパンを、いつも黙って迅に差し出した。 「二人なら、大丈夫。……二人で、ここから出るんだよ」 そう言って笑う姉の顔が、迅の世界のすべてだった。

しかし、その小さな世界も、貧民窟スラム牛耳ぎゅうじるボスの手によって簡単に踏みにじられた。 暴力と搾取。それが、この場所のルール。 姉が必死で稼いだわずかな金も、何度も奪われた。

(力がなければ、守れない。……計算だけでは、足りない)

そして、運命の日が訪れる。 いつものように金を要求しに来たボスが、成長した姉に汚らわしい手を伸ばした、その瞬間。

迅の中で、何かが切れた。

「やめろ」

ボスの前に立った迅の体は、まだ子供のそれだった。 だが、その目。 凍てつくような青い瞳に、ボスは一瞬、怯んだ。

ボス「……なんだ、このガキ……」

そこからは、覚えていない。 ただ、「計算」が「殺意」に変わった。 どうすれば最短でコイツを壊せるか。 迅は、落ちていた鉄パイプを手に取り、ボスの急所だけを、何度も、何度も——。

ボスが血の海に沈んだ時、迅は貧民窟スラムの新たな「最強」になっていた。

だが。 守りたかったはずの姉は、その混乱の中で、姿を消した。 連れ去られたのか、恐怖して逃げたのか。 それすら、もうわからない。

(……そうだ。俺は、何も守れなかった)

迅は、ゆっくりと顔を上げる。 目の前の、鋼牙を睨み据える。 その瞳は、先ほどまでの揺らぎが消え、絶対零度の「氷」に戻っていた。

迅「……ぐっ、まさか……貴様のような男が……俺の過去《トラウマ》を抉るとはな……!」

鋼牙「あ? 何ブツブツ言ってやがる!」

迅「(……もう迷わない。俺の技は、守るためにある。……姉さんを、見つけ出す、その日まで)」

迅が、再び構える。 その殺気オーラは、明らかに先ほどまでと質が違っていた。

観客「な、なんだ……!?」 観客「空気が……急に冷たくなったぞ……!?」
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