童話異聞録「浦島太郎」
制作者:
A5
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
|
完結数: 10話で完結
概要
「浦島太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、10話完結でやってみようかと思います。
とりあえず、10話完結でやってみようかと思います。
太郎が地上に戻って、3年が経った。
あの時、乙姫は止めた。カメーリアが太郎について行くことを。
でも、カメーリアは譲らなかった。
「わらわも行く」
「ダメです。あなたは——」
「乙姫様の役に立ちたいのじゃ。それに、こやつは愚民じゃからな。一人じゃ何もできん」
「愚民って言うな」
あの日の光景を、乙姫は今でも覚えている。
二人が海面から顔を出して、手を振った姿を。
それから、3年。
制御室の画面には、海洋データが映し出されている。
汚染レベルは、ゆっくりと、本当にゆっくりと下がり続けていた。
「……ギリギリ、許容範囲」
乙姫は呟いた。
約束の3年が経った。
でも。
太郎とカメーリアからの連絡は、ない。
「帰ってくると、言ったのに…」
深海の静寂が、答える代わりに彼女を包んだ。
---
それから、何年。何十年。
海のデータは、年々改善していった。
乙姫が安心できるレベルにまで、回復した。
「…すごい」
制御室で、乙姫は一人呟く。
本当に、やってくれたのだ。あの愚直な漁師が。
でも。
まだ、連絡はない。
「太郎さん……カメーリア……」
長寿の竜宮の民である乙姫にとって、数十年など、瞬きのようなものだった。
でも、人間は違う。
カメーリアも、あの子は——
ピピピッ。
突然、通信装置が鳴った。
乙姫の心臓が、跳ねた。
震える指で、画面に触れる。
『——乙姫様。カメーリアです』
「……!」
---
海面。
夕焼けが、空を赤く染めている。
乙姫が浮上すると、そこには小さな船があった。
ボロボロの、漁船。
甲板の上に、二つの影。
一つは、小さなミドリガメ。
もう一つは——
「……太郎さん」
乙姫の声が、震えた。
甲板に座っていたのは、皺だらけのお爺さんだった。
腰は曲がり、白髪が海風に揺れている。
でも、その目は。
あの時と同じ、真っ直ぐな瞳をしていた。
「おお…乙姫様か…」
老いた声。
でも、優しい声。
「変わらず美しいですのぅ。…まるで竜宮城に行ったのが昨日のようじゃ…」
太郎は、皺だらけの手で、乙姫の手を握った。
「どうですかのぉ。カメーリアは……破壊兵器にならずに済みますかのぉ」
乙姫は、何も言えなかった。
涙が、溢れた。
長い年月を経ても変わらない自分の姿。
あっという間に老いてしまった太郎の姿。
その対比が、あまりにも残酷で。
「太郎さん……っ」
乙姫は老いた太郎を抱きしめた。
「ありがとう……ありがとうございます……っ」
「おお、おお。泣かんでくだされ」
太郎は、乙姫の背中を優しく叩いた。
「カメーリアも、頑張りましたぞ」
「…うむ。太郎も、太郎もよう頑張った」
小さな声で、カメーリアが答えた。
いつもの偉そうな口調は、どこかに消えていた。
夕日が、三人を照らしている。
時は流れた。
世界は変わった。
でも。
「太郎さん……もう、休んでください」
乙姫の言葉に、太郎はにっこりと笑った。
「いやいや。まだまだ、やることがありますぞ」
「もう、十分です」
「十分じゃないですわい。わしはまだ……」
太郎の言葉が、途切れた。
「太郎?」
カメーリアが、太郎の顔を覗き込む。
老人は、静かに目を閉じていた。
穏やかな顔で。
まるで、眠るように。
「……太郎さん」
乙姫の声が、震えた。
夕焼けの海が、波の音だけを響かせていた。
あの時、乙姫は止めた。カメーリアが太郎について行くことを。
でも、カメーリアは譲らなかった。
「わらわも行く」
「ダメです。あなたは——」
「乙姫様の役に立ちたいのじゃ。それに、こやつは愚民じゃからな。一人じゃ何もできん」
「愚民って言うな」
あの日の光景を、乙姫は今でも覚えている。
二人が海面から顔を出して、手を振った姿を。
それから、3年。
制御室の画面には、海洋データが映し出されている。
汚染レベルは、ゆっくりと、本当にゆっくりと下がり続けていた。
「……ギリギリ、許容範囲」
乙姫は呟いた。
約束の3年が経った。
でも。
太郎とカメーリアからの連絡は、ない。
「帰ってくると、言ったのに…」
深海の静寂が、答える代わりに彼女を包んだ。
---
それから、何年。何十年。
海のデータは、年々改善していった。
乙姫が安心できるレベルにまで、回復した。
「…すごい」
制御室で、乙姫は一人呟く。
本当に、やってくれたのだ。あの愚直な漁師が。
でも。
まだ、連絡はない。
「太郎さん……カメーリア……」
長寿の竜宮の民である乙姫にとって、数十年など、瞬きのようなものだった。
でも、人間は違う。
カメーリアも、あの子は——
ピピピッ。
突然、通信装置が鳴った。
乙姫の心臓が、跳ねた。
震える指で、画面に触れる。
『——乙姫様。カメーリアです』
「……!」
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海面。
夕焼けが、空を赤く染めている。
乙姫が浮上すると、そこには小さな船があった。
ボロボロの、漁船。
甲板の上に、二つの影。
一つは、小さなミドリガメ。
もう一つは——
「……太郎さん」
乙姫の声が、震えた。
甲板に座っていたのは、皺だらけのお爺さんだった。
腰は曲がり、白髪が海風に揺れている。
でも、その目は。
あの時と同じ、真っ直ぐな瞳をしていた。
「おお…乙姫様か…」
老いた声。
でも、優しい声。
「変わらず美しいですのぅ。…まるで竜宮城に行ったのが昨日のようじゃ…」
太郎は、皺だらけの手で、乙姫の手を握った。
「どうですかのぉ。カメーリアは……破壊兵器にならずに済みますかのぉ」
乙姫は、何も言えなかった。
涙が、溢れた。
長い年月を経ても変わらない自分の姿。
あっという間に老いてしまった太郎の姿。
その対比が、あまりにも残酷で。
「太郎さん……っ」
乙姫は老いた太郎を抱きしめた。
「ありがとう……ありがとうございます……っ」
「おお、おお。泣かんでくだされ」
太郎は、乙姫の背中を優しく叩いた。
「カメーリアも、頑張りましたぞ」
「…うむ。太郎も、太郎もよう頑張った」
小さな声で、カメーリアが答えた。
いつもの偉そうな口調は、どこかに消えていた。
夕日が、三人を照らしている。
時は流れた。
世界は変わった。
でも。
「太郎さん……もう、休んでください」
乙姫の言葉に、太郎はにっこりと笑った。
「いやいや。まだまだ、やることがありますぞ」
「もう、十分です」
「十分じゃないですわい。わしはまだ……」
太郎の言葉が、途切れた。
「太郎?」
カメーリアが、太郎の顔を覗き込む。
老人は、静かに目を閉じていた。
穏やかな顔で。
まるで、眠るように。
「……太郎さん」
乙姫の声が、震えた。
夕焼けの海が、波の音だけを響かせていた。
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