童話異聞録その1「浦島太郎」
制作者:
A5
二次創作
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
|
完結数: 10話で完結
概要
「浦島太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、10話完結でやってみようかと思います。
乙姫の部屋を出ると、カメーリアが太郎の肩に飛び乗ってきた。
「さあさあ、貴様を歓迎する宴の準備が整っておるぞ!」
案内されたのは、円形の大広間だった。透明な天井の向こうには深海の暗闇。時折、発光する魚の群れが光の筋を描いていく。
大きな卓には、色とりどりの料理が並んでいる。貝や海藻、魚を使った、見たこともない美しい料理たち。
「すごい...」
ぱたぱたと足音が近づいてきた。タイやヒラメ、イカやタコ。海の生き物たちが人間のような姿で歩いている。頭にひれがあったり、体の一部が鱗に覆われていたりするが。
「ようこそ、浦島太郎様!」
笑顔で迎えられ、太郎は少し照れくさくなった。
宴が始まる。音楽が流れ、料理が運ばれてくる。
そして何より、カメーリアがはしゃいでいた。
「見たか見たか、太郎! この『深海真珠のムース』は絶品じゃぞ!」
「おい、食べすぎだろ」
「うるさいのう! わらわは日々激務なのじゃ! たまの宴会くらい好きにさせろ!」
肩の上でぷりぷりと怒るカメーリアを見て、太郎はくすりと笑った。
(なんだ。みんな、いい奴らじゃないか)
宴の中央には、乙姫も姿を見せていた。水色の衣装に着替え、髪飾りがきらきらと輝いている。
「どうですか? お口に合いますか?」
「はい! とても美味しいです」
「それは良かった。カメーリアがあなたを連れてきてくれて、本当に助かりました」
「助かった...?」
太郎が聞き返そうとしたが、乙姫はすっと視線を逸らした。
「ふふ、気にしないでください。さあ、もっと楽しんで」
乙姫は住人たちのほうへ歩いていった。笑いながら、宴を盛り上げている。
(優しい人だな...)
でも、何かが引っかかる。
乙姫の視線が時々、太郎のほうをちらりと向ける。まるで何かを確認するように。そして広間の隅で、例の光る板を手に取り、指で何かを操作していた。その目つきは真剣そのもので、鋭く、そして冷たかった。
太郎は気づかないふりをした。
(なんで、俺をこんなに歓迎してくれるんだ?)
(カメーリアを助けただけなのに...)
「太郎、どうした? 顔色が悪いぞ」
カメーリアが頬をぺちぺちと叩いた。
「...いや、なんでもない」
「本当か?」
「大丈夫だって」
太郎は無理やり笑顔を作った。
宴は深夜まで続いた。みんな楽しそうで、カメーリアははしゃぎまくり、乙姫はにこやかに微笑んでいた。
でも太郎の胸には、ずっと小さな違和感が残り続けた。
その夜、寝室に案内された時、ふと振り返ると廊下の奥に乙姫の姿が見えた。光る板を手に持ち、真剣な顔で見つめている。その横顔は、宴の時とは全く違う、冷たくて鋭いものだった。
(やっぱり、何かある...)
太郎はそっと扉を閉めた。
明日、もう少し探ってみよう。そう心に決めて、深海の静けさの中、眠りについた。
「さあさあ、貴様を歓迎する宴の準備が整っておるぞ!」
案内されたのは、円形の大広間だった。透明な天井の向こうには深海の暗闇。時折、発光する魚の群れが光の筋を描いていく。
大きな卓には、色とりどりの料理が並んでいる。貝や海藻、魚を使った、見たこともない美しい料理たち。
「すごい...」
ぱたぱたと足音が近づいてきた。タイやヒラメ、イカやタコ。海の生き物たちが人間のような姿で歩いている。頭にひれがあったり、体の一部が鱗に覆われていたりするが。
「ようこそ、浦島太郎様!」
笑顔で迎えられ、太郎は少し照れくさくなった。
宴が始まる。音楽が流れ、料理が運ばれてくる。
そして何より、カメーリアがはしゃいでいた。
「見たか見たか、太郎! この『深海真珠のムース』は絶品じゃぞ!」
「おい、食べすぎだろ」
「うるさいのう! わらわは日々激務なのじゃ! たまの宴会くらい好きにさせろ!」
肩の上でぷりぷりと怒るカメーリアを見て、太郎はくすりと笑った。
(なんだ。みんな、いい奴らじゃないか)
宴の中央には、乙姫も姿を見せていた。水色の衣装に着替え、髪飾りがきらきらと輝いている。
「どうですか? お口に合いますか?」
「はい! とても美味しいです」
「それは良かった。カメーリアがあなたを連れてきてくれて、本当に助かりました」
「助かった...?」
太郎が聞き返そうとしたが、乙姫はすっと視線を逸らした。
「ふふ、気にしないでください。さあ、もっと楽しんで」
乙姫は住人たちのほうへ歩いていった。笑いながら、宴を盛り上げている。
(優しい人だな...)
でも、何かが引っかかる。
乙姫の視線が時々、太郎のほうをちらりと向ける。まるで何かを確認するように。そして広間の隅で、例の光る板を手に取り、指で何かを操作していた。その目つきは真剣そのもので、鋭く、そして冷たかった。
太郎は気づかないふりをした。
(なんで、俺をこんなに歓迎してくれるんだ?)
(カメーリアを助けただけなのに...)
「太郎、どうした? 顔色が悪いぞ」
カメーリアが頬をぺちぺちと叩いた。
「...いや、なんでもない」
「本当か?」
「大丈夫だって」
太郎は無理やり笑顔を作った。
宴は深夜まで続いた。みんな楽しそうで、カメーリアははしゃぎまくり、乙姫はにこやかに微笑んでいた。
でも太郎の胸には、ずっと小さな違和感が残り続けた。
その夜、寝室に案内された時、ふと振り返ると廊下の奥に乙姫の姿が見えた。光る板を手に持ち、真剣な顔で見つめている。その横顔は、宴の時とは全く違う、冷たくて鋭いものだった。
(やっぱり、何かある...)
太郎はそっと扉を閉めた。
明日、もう少し探ってみよう。そう心に決めて、深海の静けさの中、眠りについた。
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