童話異聞録「桃太郎」
制作者:
A5
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
|
完結数: 15話で完結
|
文字数制限: 4,000文字
概要
童話異聞録 第二弾
前回の「浦島太郎」が皆様のおかげでうまく言ったので、味をしめての第二弾です
「桃太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、15話完結でやってみます。
前回の「浦島太郎」が皆様のおかげでうまく言ったので、味をしめての第二弾です
「桃太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、15話完結でやってみます。
「桃兄、下がっててくれ。こんな奴ら俺一人で十分だ」
(健は桃太郎のことを桃兄と呼ぶようになっていた)
健は太刀の柄に手をかけ、桃太郎を庇うように一歩前へ出た。その背中には、仲間を守ろうとする頼もしさが滲んでいます。
けれど、ももは首を横に振りました。
「いいえ、弓使いもいる。私も行く」
ももがそう言いかけた、まさにその時。
弟と呼ばれた武士が、不意をついて矢を放ちました。卑怯な不意打ち。ヒュン、と風を切る音が、鼓膜を震わせます。
しかし、ももは瞬きひとつせず、ほんの少し首を傾けました。
矢はももの頬を掠めることもなく、虚しく後方の空気を裂いていきました。
「…これだ」
健が思わず息を呑む。
「この目が、桃兄のすげぇとこだ…」
呆気にとられた弟に代わり、今度は兄が怒声を上げて斬りかかってきました。
「舐めるなァ!」
力任せに振り下ろされた刃。しかし、桃太郎と健、二人の呼吸は不思議なほど合っていました。
健が太刀で兄の攻撃を受け流し、その隙間を縫うように桃太郎が踏み込みます。桃太郎は短刀の峰で、兄の手首を鋭く打ちました。
カラン、と乾いた音がして、刀が地面に落ちます。
それとほぼ同時に、健が弟武士の弓を蹴り上げ、切っ先を喉元に突きつけました。
勝負は、一瞬でした。
静寂が戻った丘の麓で、へたり込んだ兄弟は信じられないものを見る目で二人を見上げています。
「くそっ…なんだよ、お前らは…」
「ただの通りすがりだ。だが、弱い者をいたぶるような連中には負けない」
健が冷ややかに言い放つと、二人は悔しそうに唇を噛み締め、俯きました。
桃太郎は短刀を収めると、木に縛られていた男の元へ歩み寄りました。
男は腰が抜けたのか、地面に座り込んだまま震えています。
「怪我はないか?」
「あ、ありがどう…ございます…おいら、猿だなんて呼ばれて…誰からも、人間扱いなんかされなくて…」
男の名は、猿吉というそうです。身寄りがなく、小柄で身軽なことから、そう呼ばれて蔑まれてきたのだといいます。
ももはしゃがみこみ、猿吉の震える手をそっと握り締めました。
「猿吉さん。あなたは猿じゃない。私たちと同じ、温かい血の通った人間だ」
その光景を見ていた武士の兄弟――兄の雷蔵と、弟の風太の心に、ある感情が芽生えていました。
「…なぁ」
雷蔵が、絞り出すように声をかけました。
「俺たちも…連れて行ってくれねぇか」
「はぁ?何言ってんだお前ら」
「頼む!俺たち、家柄だけで偉そうにしてたけど、本当は空っぽなんだ。あんたらの強さが、剣の腕だけじゃないことくらい、今の打ち込みでわかった。あんたらの背中を見て、一からやり直してぇんだ」
「おいらからも、頼みます…!この人たち、本当は根っからの悪人じゃねぇんです。寂しかっただけなんだと、思うんです」
猿吉までもが頭を下げました。ももは驚きましたが、やがて困ったように、けれど温かく微笑みました。
「わかった。でも、条件がある」
ももは二人を真っ直ぐに見据えました。
「過去のことは水に流す。その代わり、これからはその力を、誰かを守るために使うこと。それができるなら、歓迎する」
雷蔵と風太は顔を見合わせ、そして深く頷きました。
こうして、桃太郎の一行は一気に賑やかになりました。
心優しき軽業師の猿吉、そして改心した雷蔵と風太の兄弟。
五人になった一行は、潮風の香る道を、鬼ヶ島へ向けて再び歩き出したのです。
(健は桃太郎のことを桃兄と呼ぶようになっていた)
健は太刀の柄に手をかけ、桃太郎を庇うように一歩前へ出た。その背中には、仲間を守ろうとする頼もしさが滲んでいます。
けれど、ももは首を横に振りました。
「いいえ、弓使いもいる。私も行く」
ももがそう言いかけた、まさにその時。
弟と呼ばれた武士が、不意をついて矢を放ちました。卑怯な不意打ち。ヒュン、と風を切る音が、鼓膜を震わせます。
しかし、ももは瞬きひとつせず、ほんの少し首を傾けました。
矢はももの頬を掠めることもなく、虚しく後方の空気を裂いていきました。
「…これだ」
健が思わず息を呑む。
「この目が、桃兄のすげぇとこだ…」
呆気にとられた弟に代わり、今度は兄が怒声を上げて斬りかかってきました。
「舐めるなァ!」
力任せに振り下ろされた刃。しかし、桃太郎と健、二人の呼吸は不思議なほど合っていました。
健が太刀で兄の攻撃を受け流し、その隙間を縫うように桃太郎が踏み込みます。桃太郎は短刀の峰で、兄の手首を鋭く打ちました。
カラン、と乾いた音がして、刀が地面に落ちます。
それとほぼ同時に、健が弟武士の弓を蹴り上げ、切っ先を喉元に突きつけました。
勝負は、一瞬でした。
静寂が戻った丘の麓で、へたり込んだ兄弟は信じられないものを見る目で二人を見上げています。
「くそっ…なんだよ、お前らは…」
「ただの通りすがりだ。だが、弱い者をいたぶるような連中には負けない」
健が冷ややかに言い放つと、二人は悔しそうに唇を噛み締め、俯きました。
桃太郎は短刀を収めると、木に縛られていた男の元へ歩み寄りました。
男は腰が抜けたのか、地面に座り込んだまま震えています。
「怪我はないか?」
「あ、ありがどう…ございます…おいら、猿だなんて呼ばれて…誰からも、人間扱いなんかされなくて…」
男の名は、猿吉というそうです。身寄りがなく、小柄で身軽なことから、そう呼ばれて蔑まれてきたのだといいます。
ももはしゃがみこみ、猿吉の震える手をそっと握り締めました。
「猿吉さん。あなたは猿じゃない。私たちと同じ、温かい血の通った人間だ」
その光景を見ていた武士の兄弟――兄の雷蔵と、弟の風太の心に、ある感情が芽生えていました。
「…なぁ」
雷蔵が、絞り出すように声をかけました。
「俺たちも…連れて行ってくれねぇか」
「はぁ?何言ってんだお前ら」
「頼む!俺たち、家柄だけで偉そうにしてたけど、本当は空っぽなんだ。あんたらの強さが、剣の腕だけじゃないことくらい、今の打ち込みでわかった。あんたらの背中を見て、一からやり直してぇんだ」
「おいらからも、頼みます…!この人たち、本当は根っからの悪人じゃねぇんです。寂しかっただけなんだと、思うんです」
猿吉までもが頭を下げました。ももは驚きましたが、やがて困ったように、けれど温かく微笑みました。
「わかった。でも、条件がある」
ももは二人を真っ直ぐに見据えました。
「過去のことは水に流す。その代わり、これからはその力を、誰かを守るために使うこと。それができるなら、歓迎する」
雷蔵と風太は顔を見合わせ、そして深く頷きました。
こうして、桃太郎の一行は一気に賑やかになりました。
心優しき軽業師の猿吉、そして改心した雷蔵と風太の兄弟。
五人になった一行は、潮風の香る道を、鬼ヶ島へ向けて再び歩き出したのです。
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