童話異聞録「桃太郎」
制作者:
A5
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
|
完結数: 15話で完結
|
文字数制限: 4,000文字
概要
童話異聞録 第二弾
前回の「浦島太郎」が皆様のおかげでうまく言ったので、味をしめての第二弾です
「桃太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、15話完結でやってみます。
前回の「浦島太郎」が皆様のおかげでうまく言ったので、味をしめての第二弾です
「桃太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、15話完結でやってみます。
三人は山道を歩いていた。
木漏れ日。苔むした岩。遠くで鳥の声。
「なあ、鬼ヶ島ってどっちだ?」
「海の向こうだ。まずは海を目指す」
「海かあ。見たことねえな」
金太郎が鉞を肩に担ぎ直した時、かぐやが足を止めた。
「……聞こえる」
「何が?」
「声。苦しんでいる」
藪の奥。
白い羽が、ばたばたと揺れていた。
「鶴だ」
一寸坊が目を凝らす。
細い縄が足に絡みついている。罠だ。
「可哀想に……」
かぐやが近づくと、鶴は怯えて暴れた。
羽が乱れる。赤い血が白に滲む。
「静かに。助けるから」
かぐやの声は、水のように澄んでいた。
鶴の動きが止まる。
「金太郎、縄を」
「おう」
太い指が、意外なほど器用に縄をほどいた。
「よし、取れた」
「……」
鶴はじっとかぐやを見つめた。
黒い瞳。どこか人間のような光。
「お腹、空いてるんじゃないか」
一寸坊が黍団子を差し出した。
鶴は一瞬躊躇い、それから静かについばんだ。
「元気になれよ」
金太郎が頭を撫でる。
鶴は一声鳴いて、空へ飛び立った。
白い影が、青に溶けていく。
「行っちまったな」
「うん。でも、良かった」
◆◆◆
日が傾いてきた。
「やべえ、道分かんなくなった」
「金太郎が変な方に行くからだ」
「お前が『こっちが近道』って言ったんだろ!」
「言ってない」
「言った!」
かぐやが静かに歩みを止めた。
木々の隙間から見える空は、もう紫色だった。
風が冷たくなってきている。
「野宿か?」
「寒いな……」
その時、木立の向こうに、ぽつんと明かりが見えた。
「家だ」
「こんな山奥に?」
「行ってみよう」
◆◆◆
古びた小屋だった。
壁は薄く、屋根には穴が空いている。それでも、中から温かな光が漏れていた。
こんこん。
かぐやが戸を叩く。
「……どなた」
細い声。
戸が少しだけ開いて、隙間から白い顔が覗いた。
若い娘だった。
痩せて、頬がこけている。髪は長く、雪のように白い。
「旅の者です。道に迷ってしまって……一晩、泊めていただけませんか」
娘は三人を見つめた。
一寸坊。金太郎。そして、かぐや。
「……どうぞ」
囲炉裏の火。
粗末な夕餉。
「すみません、何もおもてなしできなくて」
「いや、屋根があるだけでありがてえ」
「温かいです。ありがとうございます」
娘は足を引きずっていた。
着物の裾から、赤く腫れた傷が見える。
「足、怪我してるのか?」
「……少し」
娘は視線を逸らした。
「あの」
布団を敷きながら、娘が言った。
「奥の部屋には、絶対に入らないでください」
「なんで?」
「……約束してくれますか」
「おう、分かった」
金太郎はあっさり頷いた。
一寸坊も「分かった」と言った。
かぐやだけが、黙って娘の顔を見つめていた。
◆◆◆
夜が更けた。
とん、からり。
とん、からり。
奥の部屋から、機を織る音が聞こえる。
「……なんだ?」
「機織りだな」
金太郎と一寸坊は眠い目をこすった。
かぐやは起き上がり、静かに立った。
「姉ちゃん?」
「少し待っていて」
かぐやは奥の部屋に向かった。
「おい、覗くなって——」
襖を開ける。
部屋の中。
古い機織り機。
そこにいたのは、白い鶴だった。
自分の羽を抜いて、糸にしている。
美しかった白い羽は、もうほとんど残っていなかった。
「っ……!」
鶴がかぐやに気づいて、翼で顔を隠した。
「見ないで……お願い、見ないで……」
「おやめなさい」
かぐやの声は、静かだった。
「これ以上、自分を傷つけてはいけません」
鶴は——いや、娘の姿に戻った少女は、涙を流していた。
「でも、お礼をしなくちゃ。助けてもらったのに、何もお返しできていない」
「お礼なら、もう十分いただきました」
「え……」
「温かい部屋。囲炉裏の火。それだけで、十分です」
かぐやは娘の手を取った。
冷たくて、細い手。
娘は泣いた。
声を殺して、肩を震わせて。
「恩を返したかっただけなの……」
「なら」
かぐやは微笑んだ。
月のように、静かに。
「私たちの仲間になってください」
「……え?」
「鬼退治に向かう道中です。あなたの力を、貸してほしい」
娘は目を見開いた。
「私なんかの力が……?」
「あなたは空を飛べる。それはとても大きな力です」
襖の向こうから、一寸坊と金太郎が顔を覗かせた。
「仲間、増えるのか?」
「女の子だ。よし、俺が守ってやる」
「金太郎、また余計なこと言う」
娘は三人を見て、小さく笑った。
泣きながら、笑った。
「……お鶴、と呼んでください」
「お鶴さん。よろしくお願いします」
「よろしくな、お鶴!」
「よろしく!」
こうして、四人目の仲間が加わった。
白い羽根が一枚、月明かりの中で光っていた。
木漏れ日。苔むした岩。遠くで鳥の声。
「なあ、鬼ヶ島ってどっちだ?」
「海の向こうだ。まずは海を目指す」
「海かあ。見たことねえな」
金太郎が鉞を肩に担ぎ直した時、かぐやが足を止めた。
「……聞こえる」
「何が?」
「声。苦しんでいる」
藪の奥。
白い羽が、ばたばたと揺れていた。
「鶴だ」
一寸坊が目を凝らす。
細い縄が足に絡みついている。罠だ。
「可哀想に……」
かぐやが近づくと、鶴は怯えて暴れた。
羽が乱れる。赤い血が白に滲む。
「静かに。助けるから」
かぐやの声は、水のように澄んでいた。
鶴の動きが止まる。
「金太郎、縄を」
「おう」
太い指が、意外なほど器用に縄をほどいた。
「よし、取れた」
「……」
鶴はじっとかぐやを見つめた。
黒い瞳。どこか人間のような光。
「お腹、空いてるんじゃないか」
一寸坊が黍団子を差し出した。
鶴は一瞬躊躇い、それから静かについばんだ。
「元気になれよ」
金太郎が頭を撫でる。
鶴は一声鳴いて、空へ飛び立った。
白い影が、青に溶けていく。
「行っちまったな」
「うん。でも、良かった」
◆◆◆
日が傾いてきた。
「やべえ、道分かんなくなった」
「金太郎が変な方に行くからだ」
「お前が『こっちが近道』って言ったんだろ!」
「言ってない」
「言った!」
かぐやが静かに歩みを止めた。
木々の隙間から見える空は、もう紫色だった。
風が冷たくなってきている。
「野宿か?」
「寒いな……」
その時、木立の向こうに、ぽつんと明かりが見えた。
「家だ」
「こんな山奥に?」
「行ってみよう」
◆◆◆
古びた小屋だった。
壁は薄く、屋根には穴が空いている。それでも、中から温かな光が漏れていた。
こんこん。
かぐやが戸を叩く。
「……どなた」
細い声。
戸が少しだけ開いて、隙間から白い顔が覗いた。
若い娘だった。
痩せて、頬がこけている。髪は長く、雪のように白い。
「旅の者です。道に迷ってしまって……一晩、泊めていただけませんか」
娘は三人を見つめた。
一寸坊。金太郎。そして、かぐや。
「……どうぞ」
囲炉裏の火。
粗末な夕餉。
「すみません、何もおもてなしできなくて」
「いや、屋根があるだけでありがてえ」
「温かいです。ありがとうございます」
娘は足を引きずっていた。
着物の裾から、赤く腫れた傷が見える。
「足、怪我してるのか?」
「……少し」
娘は視線を逸らした。
「あの」
布団を敷きながら、娘が言った。
「奥の部屋には、絶対に入らないでください」
「なんで?」
「……約束してくれますか」
「おう、分かった」
金太郎はあっさり頷いた。
一寸坊も「分かった」と言った。
かぐやだけが、黙って娘の顔を見つめていた。
◆◆◆
夜が更けた。
とん、からり。
とん、からり。
奥の部屋から、機を織る音が聞こえる。
「……なんだ?」
「機織りだな」
金太郎と一寸坊は眠い目をこすった。
かぐやは起き上がり、静かに立った。
「姉ちゃん?」
「少し待っていて」
かぐやは奥の部屋に向かった。
「おい、覗くなって——」
襖を開ける。
部屋の中。
古い機織り機。
そこにいたのは、白い鶴だった。
自分の羽を抜いて、糸にしている。
美しかった白い羽は、もうほとんど残っていなかった。
「っ……!」
鶴がかぐやに気づいて、翼で顔を隠した。
「見ないで……お願い、見ないで……」
「おやめなさい」
かぐやの声は、静かだった。
「これ以上、自分を傷つけてはいけません」
鶴は——いや、娘の姿に戻った少女は、涙を流していた。
「でも、お礼をしなくちゃ。助けてもらったのに、何もお返しできていない」
「お礼なら、もう十分いただきました」
「え……」
「温かい部屋。囲炉裏の火。それだけで、十分です」
かぐやは娘の手を取った。
冷たくて、細い手。
娘は泣いた。
声を殺して、肩を震わせて。
「恩を返したかっただけなの……」
「なら」
かぐやは微笑んだ。
月のように、静かに。
「私たちの仲間になってください」
「……え?」
「鬼退治に向かう道中です。あなたの力を、貸してほしい」
娘は目を見開いた。
「私なんかの力が……?」
「あなたは空を飛べる。それはとても大きな力です」
襖の向こうから、一寸坊と金太郎が顔を覗かせた。
「仲間、増えるのか?」
「女の子だ。よし、俺が守ってやる」
「金太郎、また余計なこと言う」
娘は三人を見て、小さく笑った。
泣きながら、笑った。
「……お鶴、と呼んでください」
「お鶴さん。よろしくお願いします」
「よろしくな、お鶴!」
「よろしく!」
こうして、四人目の仲間が加わった。
白い羽根が一枚、月明かりの中で光っていた。
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