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童話異聞録「桃太郎」

制作者: A5
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員 | 完結数: 15話で完結 | 文字数制限: 4,000文字

概要

第12話 傾奇者
蒼月(そうげつ)
2026年01月04日 10:54 | 26
宿場町の大通り。
昼下がりの陽射しが、往来に長い影を落としていた。

桃太郎一行は、茶屋の縁台に腰を下ろしていた。
団子を頬張る猿吉。茶を啜る雷蔵と風太。そしてその隣で、ぼんやりと空を見上げる桃太郎。

「――おや」

不意に、人垣がざわめいた。
派手だった。
真紅の着流しに、金糸の刺繍。髪は炎のように逆立ち、耳には揺れる飾り。腰には鎖の巻きついた鎌。
傾奇者だ。

「おいおいおい、なんだありゃあ」
風太が目を丸くする。
傾奇者は真っ直ぐ歩いてきた。
そして、桃太郎の前でぴたりと足を止めた。

「よぉ」
にっ、と笑う。
「あんた、いい顔してんな。俺と一杯やらねぇか」
桃太郎が目を瞬かせる。
「は?」
「いやぁ、この辺じゃ見ねぇ顔だと思ってよ。旅の者だろ? 退屈してんだろ? 俺が相手してやるよ」

馴れ馴れしく肩に手を回そうとする。
その手を、健が掴んだ。
「おい」
「あん?」
「桃兄に何してやがる」
「桃兄? ああ、こいつの名か。いい名だな」
「触んな。桃兄は男だ」
「知ってるよ」

傾奇者はあっさりと答えた。
「俺はどっちもいける口でな」
健の顔が、みるみる赤くなった。
「てめぇ……!」
「いいだろ別に。減るもんじゃねぇし」
「減るわ!っていうか離れろ!」
「まあまあ落ち着けよ犬っころ」
「誰が犬だ!」
「吠えてんじゃん」
「吠えてねぇ!」

猿吉が団子を咥えたまま呟いた。
「……吠えてますね」
「うるせぇ!」

傾奇者は肩をすくめた。
「つれねぇな。せっかく声かけてやったのによ」
「誰も頼んでねぇ」

「そう言うなって。なぁ、桃の旦那。一晩でいいからよ」
「断る」

桃太郎が立ち上がった。
「私たちは急いでいる」
「冷てぇな。どこ行くんだよ」
「関係ない」

桃太郎が歩き出す。傾奇者がその腕を掴んだ。
「まぁ待てって――」

次の瞬間。
傾奇者の身体が宙を舞った。

どすん、と派手な音。
背中から地面に叩きつけられ、目を白黒させている。

「……うそだろ」
雷蔵が呆然と呟いた。

桃太郎は何事もなかったかのように着物の袖を払った。
「行こう」

「お、おう……」
一行は茶屋を後にした。
地面に転がったままの傾奇者を残して。
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このパートからの分岐 (1)
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蒼月(そうげつ) 蒼月(そうげつ)
01/04 21:18
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