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童話異聞録「桃太郎」

制作者: A5
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員 | 完結数: 15話で完結 | 文字数制限: 4,000文字

概要

第2話 若返りの桃
冬至梅
2025年12月10日 23:44 | 74
お婆さんは家に戻ると、早速手ぬぐいから桃を取り出しました。包丁を手に取り、そっと桃に刃を入れると、桃はみずみずしい香りを広げて二つに割れました。

 ちょうどその時、お爺さんが芝刈りから帰ってきました。

「婆さんや、戻ったぞ」

 声をかけながら戸を潜ると、お爺さんは香りに気づいて目を丸くしました。

「おや、美味そうな桃ではないか」

「川で拾ったんですよ。二人で食べましょうね」

 お婆さんが差し出した桃の半分を、お爺さんは嬉しそうに受け取り、二人は笑い合いながら桃を口に運びました。柔らかい果肉の甘みが口いっぱいに広がり、二人は思わず顔を見合わせます。

「こりゃあ、美味い桃じゃ……」

「ええ……なんだか、不思議なほどに」

 その夜、二人はいつもよりも深く眠りにつきました。

***

 翌朝、鳥の声が響く頃。お婆さんはいつものように目を覚ましましたが、自分の手元を見て息を呑みました。

「これは……!どういうことじゃ……?」

 シワが無くなり、肌は張りを取り戻し、まるで嫁入り前の姿に戻っているのです。急いで隣を見ると、お爺さんもまた目を見開いていました。

「婆さんや……!わしはまだ夢の中におるのか?」

「いいえ、お爺さん……!ですが、どう見ても若い頃の姿です」

 二人はしばらく呆然としていましたが、やがて昨日食べた桃を思い出しました。普通の桃に見えましたが、あの不思議な甘さ。二人は顔を見合わせ、静かに頷きました。

「……あの桃は、きっと天からの贈り物だったのじゃろう」

「ええ、私たちにもう一度生き直せという、お告げかもしれませんね」

 その日から二人は、若返った身体で改めて仕事に励み、村の人々からは驚きと羨望の目で見られるようになりました。

***

 それから数年の月日が流れました。

 若返ったお爺さんとお婆さん――今では再び名前で呼ばれるようになった「藤兵衛とうべえ」と「おね」の家には、新たな笑い声が生まれていました。おねが大切そうに抱いているのは、まだ幼い娘です。

「藤兵衛どの、この子もよく笑うようになりましたね」

「おう、おね。まるで陽だまりのようじゃ」

 二人は娘に「もも」と名付けていました。あの日、川上から流れてきた桃――二人に若さを与え、新たな命を呼び寄せた不思議な贈り物にちなみ、心からの感謝を込めて。

 こうして藤兵衛、おね、そしてももの三人家族は、穏やかな日々を過ごしていたのです。
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このパートからの分岐 (1)
秘めたる決意

あれから数年の時が流れました。 藤兵衛とおねの愛情を一身に受けて育ったももは、村の誰もが振り返るよ...

あさり あさり
12/11 17:09
全階層の表示(17件)
第1話 川上からの贈り物 A5 1 81
・昔々あるところにお爺さんとお婆さんがいました。 お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さ...
第2話 若返りの桃 冬至梅 0 75
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第4話 不思議な出会い 冬至梅 0 62
・もも改め桃太郎は、夜明けの薄明かりを背に家を後にしました。  海までは、それな...
第5話 日ノ本一のきび団子 冬至梅 0 66
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第9話 新しい仲間たち 蒼月(そうげつ) 0 57
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第10話 迷い クロマル 0 58
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第11話 妖艶の宴 クロマル 0 42
・館の門をくぐると、朱塗りの廊下が奥へと続いていた。 壁には金箔の屏風。天井からは...
第12話 傾奇者 蒼月(そうげつ) 0 26
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第13話 鎖鎌の朱雉 蒼月(そうげつ) 0 21
・街道に出ると、人通りが減った。 木々が両側から迫り、空が細く切り取られている。...
第2話 祝福 クロマル 0 54
・お婆さんが川から持ち帰った桃をまな板に乗せ、包丁を手に取ったその時、玄関の戸が勢...
第3話 旅立ち 蒼月(そうげつ) 0 30
・あれから十数年の月日が流れました。 竹から生まれたかぐやは、お爺さんの予言通...
第4話 山の暴れん坊 レュー 0 26
・少年の名は金太郎。 足柄山で熊を相手に相撲をとって育ったという、まさに野生児だっ...
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