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童話異聞録「桃太郎」

制作者: A5
小説設定: | 連続投稿: | 投稿権限: 全員 | 完結数: 15話で完結 | 文字数制限: 4,000文字

概要

第5話 日ノ本一のきび団子
冬至梅
2025年12月12日 16:55 | 66
老婆の家は、竹林の奥にひっそりと建っていました。

「さあさ、遠慮せんと入りなされ」

 桃太郎が戸をくぐると、土間の奥には小さな囲炉裏いろりがあり、湯気の立つ鍋がぐつぐつと音を立てています。
 老婆は手際よく椀を取り出し、雑炊をよそって差し出してきました。

「それと……これじゃ」

 皿に並べられたのは、素朴なきびの団子でした。

「これはのう、日ノ本いちの黍団子じゃ」

桃太郎は目を丸くします。

「それほどに?」

「ほほほ、自惚うぬぼれで言うておるのではないぞ。
 昔、お稲荷さまが夢枕に立ってのう……わしに作り方を教えてくれたんじゃ。一つ食うだけで千人力ぞ」

 言われるままに一つ口に入れると、ほのかな甘みと香ばしさがあり、疲れがふっと軽くなるような気がしました。

「……誠に、力が湧いてくる気がいたします」

「そうじゃろう、そうじゃろう。若い者にはよう効くんじゃ」

 老婆は満足げに頷くと、続けて言いました。

「明日、ここを出るのじゃろう? その時は、この団子を持っていくとええ。旅にはきっと役に立つぞい」

 桃太郎は深く頭を下げました。

「ありがとうございます。でしたら……手伝わせていただきます」

「おお、それは助かるのう。せっかくじゃから、ようけ作っておこう」

 それから二人は並んで団子を作り始めました。言葉は少ないけれど、不思議と心の落ち着く時間でした。

 こうして、桃太郎の旅の始まりの夜は、更けていくのでした。
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