童話異聞録「桃太郎」
制作者:
A5
小説設定:
|
連続投稿: 可
|
投稿権限:
全員
|
完結数: 15話で完結
|
文字数制限: 4,000文字
概要
童話異聞録 第二弾
前回の「浦島太郎」が皆様のおかげでうまく言ったので、味をしめての第二弾です
「桃太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、15話完結でやってみます。
前回の「浦島太郎」が皆様のおかげでうまく言ったので、味をしめての第二弾です
「桃太郎」のお話をベースに、違う結末にしていきたいと思います。
とりあえず、15話完結でやってみます。
館の門をくぐると、朱塗りの廊下が奥へと続いていた。
壁には金箔の屏風。天井からは絹の飾り布が垂れ下がっている。
「…派手だな」
健が呟いた。
奥の間へ通されると、一人の女が待っていた。
年の頃は三十ほど。白い肌に、濡れたような黒髪。唇には紅が引かれ、目元には妖しい影が落ちている。
「ようこそいらっしゃいました。私、江角の妻でございます」
深く頭を下げる仕草。着物の袖が畳に流れた。
「主人は少々体調を崩しておりまして…代わりに、私がおもてなしを」
「それは心配ですね。お大事に」
桃太郎が丁寧に返すと、女はにっこりと微笑んだ。
その笑顔が、どこか作り物めいて見えたのは気のせいだろうか。
***
宴が始まった。
膳には山海の珍味。酒は次々と注がれる。
雷蔵と風太は早くも顔を赤くして、猿吉と肩を組んで騒いでいた。
「いやぁ、こりゃうめぇ!」
「おいらもう三杯目っす!」
「飲め飲め!今日くらいいいだろ!」
桃太郎は杯を口元に運ぶふりだけして、そっと膳に戻した。
健も同じく、酒には手をつけていない。
江角の妻は、酒を飲む男たちの間を優雅に動き回っている。雷蔵の杯に酒を注ぎ、風太の肩に手を置き、猿吉の頬に指を這わせる。
その度に、男たちの顔から血の気が引いていくように見えた。
「なぁ…なんか、だるくねぇか」
雷蔵が呂律の回らない声で言った。
「俺も…なんか、力が…」
風太が杯を取り落とす。猿吉はすでに畳に突っ伏していた。
健の額にも、冷や汗が浮かんでいる。
「くそ…俺まで…酒には、手をつけないようにしてたのに…」
膝から力が抜けていく。まるで、身体の中から何かが吸い取られていくような感覚。
「おや」
江角の妻が、ゆっくりと振り向いた。
「あなたは…平気なのですね」
その視線の先には、桃太郎が静かに座っていた。
顔色一つ変わらず、真っ直ぐに女を見据えている。
「…何者だ、お前」
健が這うように桃太郎の前に出ようとする。しかし、身体が動かない。
女の唇が、三日月のように歪んだ。
「あらあら、気づかれてしまいましたか」
瞬間、女の姿が揺らいだ。
白い肌が青白く変わり、黒髪は蛇のようにうねり始める。目は金色に輝き、口元からは鋭い牙が覗いた。
「私は男の精気を喰らう者。この館の主人も、とうに喰い尽くしました」
妖怪が嗤う。
「さあ、あなたも――」
桃太郎は静かに立ち上がった。
短刀を抜き放つ。
銀色の刃が、燭台の灯りを反射して煌めいた。
「な…なぜ立てる、なぜ効かぬ!?」
妖怪が驚愕の声を上げる。
桃太郎は答えなかった。ただ一歩、また一歩と距離を詰める。
妖怪が爪を振るう。桃太郎はそれを紙一重でかわし、懐に飛び込んだ。
一閃。
悲鳴が響き、妖怪の身体が黒い霧となって散っていく。
「おのれ…何者…」
それが、最後の言葉だった。
***
しばらくして、男たちは意識を取り戻した。
奪われた精気は、妖怪が消えたことで少しずつ戻ってきたらしい。
「うぅ…何が起きたんだ…」
「妖怪だ。桃太郎さんが退治してくれた」
健が説明すると、雷蔵たちは目を丸くした。
「マジかよ…」
「おいら、全然気づかなかった…」
皆が桃太郎に感謝の言葉を述べる中、健だけは黙っていた。
(俺は…あの妖怪の術にかかった)
拳を握りしめる。
(なのに桃兄は、全く平気だった)
桃太郎の横顔を見る。
夜風に髪を揺らしながら、静かに月を見上げている。
(…やっぱり、桃兄には特別な力があるのか)
健の脳裏に、雷蔵たちの言葉がよぎる。
――もしかして桃太郎さんって…女なんじゃねぇかって。
(まさか…な)
健は頭を振った。
けれど、胸の奥に芽生えた小さな疑念は、消えてくれなかった。
壁には金箔の屏風。天井からは絹の飾り布が垂れ下がっている。
「…派手だな」
健が呟いた。
奥の間へ通されると、一人の女が待っていた。
年の頃は三十ほど。白い肌に、濡れたような黒髪。唇には紅が引かれ、目元には妖しい影が落ちている。
「ようこそいらっしゃいました。私、江角の妻でございます」
深く頭を下げる仕草。着物の袖が畳に流れた。
「主人は少々体調を崩しておりまして…代わりに、私がおもてなしを」
「それは心配ですね。お大事に」
桃太郎が丁寧に返すと、女はにっこりと微笑んだ。
その笑顔が、どこか作り物めいて見えたのは気のせいだろうか。
***
宴が始まった。
膳には山海の珍味。酒は次々と注がれる。
雷蔵と風太は早くも顔を赤くして、猿吉と肩を組んで騒いでいた。
「いやぁ、こりゃうめぇ!」
「おいらもう三杯目っす!」
「飲め飲め!今日くらいいいだろ!」
桃太郎は杯を口元に運ぶふりだけして、そっと膳に戻した。
健も同じく、酒には手をつけていない。
江角の妻は、酒を飲む男たちの間を優雅に動き回っている。雷蔵の杯に酒を注ぎ、風太の肩に手を置き、猿吉の頬に指を這わせる。
その度に、男たちの顔から血の気が引いていくように見えた。
「なぁ…なんか、だるくねぇか」
雷蔵が呂律の回らない声で言った。
「俺も…なんか、力が…」
風太が杯を取り落とす。猿吉はすでに畳に突っ伏していた。
健の額にも、冷や汗が浮かんでいる。
「くそ…俺まで…酒には、手をつけないようにしてたのに…」
膝から力が抜けていく。まるで、身体の中から何かが吸い取られていくような感覚。
「おや」
江角の妻が、ゆっくりと振り向いた。
「あなたは…平気なのですね」
その視線の先には、桃太郎が静かに座っていた。
顔色一つ変わらず、真っ直ぐに女を見据えている。
「…何者だ、お前」
健が這うように桃太郎の前に出ようとする。しかし、身体が動かない。
女の唇が、三日月のように歪んだ。
「あらあら、気づかれてしまいましたか」
瞬間、女の姿が揺らいだ。
白い肌が青白く変わり、黒髪は蛇のようにうねり始める。目は金色に輝き、口元からは鋭い牙が覗いた。
「私は男の精気を喰らう者。この館の主人も、とうに喰い尽くしました」
妖怪が嗤う。
「さあ、あなたも――」
桃太郎は静かに立ち上がった。
短刀を抜き放つ。
銀色の刃が、燭台の灯りを反射して煌めいた。
「な…なぜ立てる、なぜ効かぬ!?」
妖怪が驚愕の声を上げる。
桃太郎は答えなかった。ただ一歩、また一歩と距離を詰める。
妖怪が爪を振るう。桃太郎はそれを紙一重でかわし、懐に飛び込んだ。
一閃。
悲鳴が響き、妖怪の身体が黒い霧となって散っていく。
「おのれ…何者…」
それが、最後の言葉だった。
***
しばらくして、男たちは意識を取り戻した。
奪われた精気は、妖怪が消えたことで少しずつ戻ってきたらしい。
「うぅ…何が起きたんだ…」
「妖怪だ。桃太郎さんが退治してくれた」
健が説明すると、雷蔵たちは目を丸くした。
「マジかよ…」
「おいら、全然気づかなかった…」
皆が桃太郎に感謝の言葉を述べる中、健だけは黙っていた。
(俺は…あの妖怪の術にかかった)
拳を握りしめる。
(なのに桃兄は、全く平気だった)
桃太郎の横顔を見る。
夜風に髪を揺らしながら、静かに月を見上げている。
(…やっぱり、桃兄には特別な力があるのか)
健の脳裏に、雷蔵たちの言葉がよぎる。
――もしかして桃太郎さんって…女なんじゃねぇかって。
(まさか…な)
健は頭を振った。
けれど、胸の奥に芽生えた小さな疑念は、消えてくれなかった。
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